地域のミューズを発掘するメディア
これまでの歩み
福岡の大学を卒業後、就職を考えてはいたものの、当時はちょうど就職氷河期。特別に入りたい会社があったわけでもなく、自己PRも得意ではなかったため、就職活動は途中で諦めてしまいました。
その頃、飲食店でアルバイトをしていたのですが、そこの店長が本当に楽しそうに働いていたんです。「こんなふうに働けたらいいな」と思い、その流れでアルバイト先に正社員として入社しました。
料理が得意だったわけでも、飲食業を志していたわけでもないんですけどね。ただ、“楽しそうに働く大人が身近にいた”という理由だけで選んだのが、結果的に飲食業に携わるきっかけになりました。
飲食店で働き始めて5年目には、店長を任されるようになっていました。ただその頃、「もうここで新しく学ぶことはあまりないな」と、仕事に対して少し飽きを感じていたんです。若さゆえ、生意気だったんでしょうね。
そんなタイミングで、新店舗の店長を任されることになりました。何もないスケルトンのコンクリートの状態から、お店が少しずつ形になり、完成していく。そのプロセスを最初から最後まで間近で見たら、ものすごく感動してしまって。
「自分でも作ってみたい!」と思うようになり、飲食店を退職して内装業の世界へ進みました。まずはインテリア系の学校に通いながら、アルバイトとして内装会社で働き、卒業後にそのまま正社員として入社しました。
内装業の仕事自体はとても楽しかったのですが、建物が完成したら鍵を渡して終わり、という仕事でもありました。お客さんやスタッフの喜ぶ顔を見ることはできませんし、そこに料理や音楽が加わることもない。次第に、「自分は最後まで見届けたいタイプなんだな」と感じるようになっていきました。そんな思いを社長に相談したところ、「もう一度飲食業に戻って、やりたいことができるポジションを目指してみたら?」と背中を押してもらえて。ちょうどその頃、後に福岡を中心に飲食事業を展開しているアトモスダイニングの会長となる方と、同社のフランチャイズを千葉で手がけていた方(どちらも以前、飲食チェーン時代にお世話になった上司)から、「東京でいろんな飲食店を展開していきたいから、一緒にやろう」と声をかけてもらったんです。それで、東京で展開していくために2人が作った会社に入ることになりました。
自分で飲食事業をやりたいというのはずっと思っていて、もしやるなら地元に貢献したいという思いがあったため、2人の社長に相談してみたんです。そしたら、「それならば、アトモスダイニングにおいでよ」と誘ってもらえて。福岡に戻り、アトモスダイニングに入社ました。
一方で、以前から「いつかは自分で事業をやりたい」という思いも持ち続けていて、その気持ちを正直に相談したところ、ありがたいことにアトモスダイニングを辞めることなく起業するという選択肢を提案してもらいました。現在は自身の会社でも飲食店や、そのほかさまざまな事業を経営しています。
武井剛さんの未来地図
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現在はアトモスダイニングの副社長として働きつつ、起業した自身の会社でも複数の飲食店を運営しています。また、長年飲食業に携わってきましたが、コロナ禍を経て飲食事業だけに依存するのはリスクが高いと感じ、新たな挑戦として立ち上げたのが、キックボクシングジム。キックボクシングは趣味で5年前に始めたんです。こちらは現在、8店舗まで広がっています。うち1店舗はプロ専用のジムです。
そして2024年から、さらに新しい挑戦として始めたのが「米事業」。飲食業は若い世代が中心になっていくべきだと考えていて、自分自身は少しずつ現場を離れていこうと思っています。ただ、「食」の世界には携わっていたいので、生産者側から飲食店を支える立場として関わっていきたいと考えたんです。お米は、誰にとっても身近で、誰からも喜ばれる食材ですよね。「米事業をやる」と話して、怪訝な顔をされたことは一度もありません(笑)。一方で、コーヒーには「どこの豆で、どんな焙煎が好きか」といった会話があるのに、毎日のように食べているお米については、意外と語られることが少ない。「いつも新潟のコシヒカリ」といった一言で終わってしまうことがほとんどです。でも、いちばん口にしているのは、間違いなくお米なんですよね。だからこそ、「お米について語る会話」がもっと日常にあってもいいんじゃないかな、と思っています。
現在は2人体制で米のブランドづくりを進めており、久留米で米農家の方に教わりながら、栽培や流通について一から学んでいる段階です。無農薬で、本当に美味しいお米を追求していきたいですね。
ゼロから始めた米づくり
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何かを新しくつくることに夢中になって、店舗コンサルの仕事をやっています。やっぱり、毎回ワクワクするんですよね。依頼者ごとにコンセプトも違えば、飲食のプロの方もいれば、まったくの未経験者の方もいる。同じ仕事は一度としてなく、その違いがあるからこそ、飽きずに続けてこられたのだと思います。なかでも一番のやりがいは、自分たちが手がけたお店にお客さんがたくさん入っている光景を見ることです。
特に印象に残っているのは、福祉事業会社が運営するアイスクリーム店を手がけたときのこと。先方からは、「素人がつくったようなお店ではなく、飲食店のプロとしてきちんとしたお店をつくってほしい」という要望がありました。完成後、そのお店では障害のある方がスタッフとして働くことになったのですが、オープン後に親御さんたちが来店され、「自分の子どもが、こんな素敵なお店で働けるなんて……!」と、涙を流して喜んでくださったんです。
スタッフに感謝されることはあっても、そのご家族から直接感謝の言葉をもらう機会は、そう多くありません。その瞬間は、本当に胸を打たれました。
誰かの人生の一部に関われて、その人が心から喜んでくれることは、自分にとっていちばんの原動力になっています。
03
そろそろ現場を離れる…と言いながらも、海外での飲食事業の展開を考えています。すでにハワイとタイには店舗を出していて、次に力を入れたいと考えているのがベトナムです。ベトナムは、これから確実に伸びていく国だと感じています。今後10年ほどは腰を据えて取り組みたいですね。理由はいくつかありますが、まずアジアの人たちはとても温かい。日本食に対するリスペクトも強く、日本という国そのものを好きでいてくれる空気があります。
さらに、日本の平均年齢が約50歳なのに対して、ベトナムは約35歳。若い世代が中心で、経済も成長していて、仕事もアクティブ。その分、外食文化も活発で、朝から深夜まで飲食店がにぎわっています。
日本では飲食店が飽和し、いわゆる“映え”を意識しないと流行りづらい時代になっています。それが悪いとは思いませんが、本当にいいお店をつくったときに、素直に喜んでくれる人が多い場所のほうが、やりがいを感じられる。そう思って、ベトナムに魅力を感じています。
個人的な未来としては、家族で世界中を旅したいですね。体が元気なうちに、いろいろな場所を見て、感じておきたい。そのためにも、仕事は少しずつ若い世代にパスしていきたいと考えています。……とはいえ、頼まれると断れない性格なので、気づくとオーバーワーク気味なのが今の課題なんですけどね(笑)。
武井剛さんに10のQuestions!
Q1
アトモスダイニングの会長に声をかけてもらったこと。あのタイミングで誘っていただけなければ、今の自分はなかったと思います。
現在は社内独立という形で事業を行っていますが、会社と資本関係はなく、完全に信頼関係の上で成り立っています。そうした関係性を築けていること自体が本当にありがたく、強い感謝と恩を感じています。
Q2
飽きっぽい、せっかち、適当。
Q3
子どもの成長。
5歳の息子は生まれつき自閉症があり、まだ言葉でのやりとりはあまりできません。ただ、最近は「お腹が空いた」「お風呂に入りたい」といった気持ちを、カードを使って自分から伝えられるようになってきました。
一つひとつは小さなことかもしれませんが、日々その成長を感じるたびに、心が動かされます。
Q4
やると決めたことをやらない。
Q5
120点です。
こんなに楽しい人生を送れるとは、正直思っていませんでした。それに、振り返ると節目節目で本当に人に恵まれてきたなと感じています。
以前は、仕事がうまくできていない人を見ると、ついイラッとしてしまうこともありました。でも今は、一緒に仕事をしてくれていること自体に、自然と感謝の気持ちが湧くようになりました。まわりの人たちがいなければ、「米事業をやりたい」とか「海外に行きたい」とか、きっと言えないですよね(笑)。いろいろ含めて、今は本当にありがたい状態だと思っています。
Q6
夫婦で徳を積むこと。
Q7
人のせいにする(笑)。仕事の借りは仕事で返す。
Q8
特にないですね。今の人生で大満足なので。
Q9
「人生楽しんでなんぼでしょ」。
Q10
経営者を1000人輩出すること。
※本記事の情報は、掲載日もしくは更新日時点のものです。(更新日: 2026年02月19日)
Profile
プロフィール
武井剛/Tsuyoshi Takei
スマイルスイッチ株式会社代表
福岡県出身。大学卒業後、アルバイト先だった飲食店に正社員として入社し、飲食業界でのキャリアをスタート。店舗運営や新店立ち上げを経験する中で「場づくり」に魅力を感じ、内装業を経て再び飲食の世界へ。現在はアトモスダイニング(株)で副社長を務めながら、スマイルスイッチ(株)でも9店舗を運営。コロナ禍をきっかけに事業の多角化を進め、キックボクシングジムを8店舗展開。2024年からは米事業にも取り組み、生産者側から飲食店を支える新たな挑戦を続けている。
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