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株式会社Uinta Partners代表取締役/コーチング
糸島を拠点に会社を経営するコワルスキー貴幹さん。経営コンサルタントとしてキャリアを築く一方で、2025年からは声の仕事や恋愛コーチングなど、個人としての活動も精力的にスタートさせている。だが、彼が何よりも大切にしているのは「家族との幸せ」だ。仕事も活動も、そのためにある。そう言い切る姿は、驚くほど潔い。インタビューの中で彼が繰り返し口にしたのは、「自由最大化」という言葉。
自由のかたちは人それぞれだが、自分にとっての自由とは何かを認識し、深く掘り下げていくこと。そのプロセスこそが、仕事や人生のあらゆる選択において、最も重要なのかもしれない。
これまでの歩み
学生時代は機械工学を専攻し、ずっとエンジニアを目指していました。しかし、インターンシップで実際に製品開発の現場に関わってみると、どこか「自分には少し違うかもしれない」と違和感がありました。
そんな時に出会ったのが、ベイン・アンド・カンパニーでした。エンジニアとして面白みを感じていた「論理的に課題を解決する」というプロセスが、そのままビジネスの大きな世界に当てはめられると知り、とてもワクワクしたんです。自分のスキルで企業の複雑な課題を解き明かしていくんだと、希望に満ち溢れて新社会人としてのスタートを切りました。
ちょうどコロナ禍が始まった頃で、コンサル3年目でした。海外の投資ファンドがある日本企業を買収するかどうか、そのデューデリジェンスを担当してたのですが、これがかなりハードで。仕事が毎日朝7時から、翌日の朝3時、プレッシャーがマックスな環境で2週間くらい続いてました。で、ある日、普通に朝ごはん食べて仕事を始めた途端、突然、経験したことのない勢いの嘔吐に襲われました。鏡を見ると目の周りに真っ赤な斑点が浮き出ていました。血圧が一気に上がりすぎてたんだと思います。「さすがにこれはまずい」と思い、そのままプロジェクト外れて2週間くらい寝たきりでした。おそらく原因は過労とストレス。病院には行かずとにかく休みました。完全に限界に達していたんでしょうね。何のためにここまで自分を追い込んで仕事をしているんだろう、と人生における仕事の意味をちゃんと考えるきっかけとなる出来事でした。
長女が生まれる時に育児休暇を取得し、妻の実家がある糸島に数ヶ月住みました。赤ちゃんを連れて田んぼの中を散歩したり、ビーチでねっ転んだり、森でピクニックしたりする幸せな育児休暇でした。復職に合わせて東京に戻る時、最後にビーチに行ったのですが、糸島を離れるのが悲しくて涙が出たのです。(こんなに糸島が好きになったのか、と自分に驚きました。笑)
いつか糸島に引っ越そう、とその時妻と二人で決めました。想像以上に状況が早く整って、2021年に糸島移住が叶いました。
東京は刺激も多く楽しい街ではありましたが、どこか疲れやすさも感じていて。癒されようと東京で大自然に触れようと思うと、どうしても一日がかりになりますよね。糸島では、平日の夕方でも思い立ったタイミングで、海や山、滝といった自然に運転10分で行けます。その距離感が、とても心地いいと感じています。
余白を持ちながら面白く事業を展開することや、より仕事上の自由度を高めることを主なモチベーションとして起業することにしました。少しのリスクを取ることと引き換えに、誰とどんな仕事をするのか、どんなペースで仕事するのか、何を目的として仕事するのか、といったものを全て自分の一存で決める権利を手に入れます。自分にとっては合理的なトレードオフに思えて、起業を決意しました。
コワルスキー貴幹さんの未来地図
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とにかく、いろいろやっています(笑)。
事業としては、2023年に株式会社Uinta Partnersを創業しました。
今は海外ソフトウェア企業の代理販売事業を立ち上げています。自分のバックグラウンドが生きる領域であり、ストック型収益が生まれるビジネスモデルなのでうまくいけば自由度が高まります。
並行して企業のコンサルやM&Aアドバイザリーもしており、これまでの外資系コンサルやスタートアップでの経験を直接的に還元しながら、企業の事業成長や転換期を支援しています。
そうした事業基盤をつくる一方で、純粋な自分の興味や「やってみたい」という気持ちにまっすぐ向き合いたくて、個人のコーチングや声の仕事(ナレーション)に取り組んでいます。声の仕事については、昔から興味があって、自動車のテレビCMのナレーションを真似したりしていました。学生時代にはバンド活動をしていたこともあり、表現することへの興味はずっとどこかにありました。ネイティブレベルで英語が使えることも、ひとつの強みですね。
コーチングに関しては、昔から友人や知人に恋愛相談を受けることが多かったのが原点です。うちは夫婦仲も良く、「どうしてそんなにうまくいっているの?」と聞かれることもよくあります。たとえば、週に1回は夫婦で定例会議をするなど、意識的にコミュニケーションを取っていることが大きいと思っています。そうした自分たちの実体験や価値観、そして2人で研究してきたコミュニケーションフレームワークなどをもとに、プログラムを設計して、主に新婚前後の人を対象にアドバイスをしています。これから他のテーマにも広げて行きたいと考えています。
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ベースにあるのは、「自由最大化」という考え方です。
キャリアの最初の数年は、かなりハードな働き方をしていて、自由度が低い状態でした。その後、コンサルからスタートアップ企業に転職してかなり自由度が上がって嬉しかったのを覚えています。花見の時期に満開の桜を背景に公園からウェブ会議に出て上司に「スタートアップの働き方を心得ていますね」と言われたこともあります(笑)。数年後は更なる自由を求めるようになり、起業に至りました。
自分の自由へのこだわりがどこから来ているかというと、中学〜高校〜大学の約10年は良い成績や就職時に有利になるための活動に集中しすぎて「自分が何をしたいか」を無視してきた気がします。社会人になったらその“履歴書最適化ゲーム”みたいな生き方から解放されると思ったのに、働き始めると平日が完全に仕事で埋まるというサラリーマンの現実を知りました。それまでの頑張りは何のためだったんだろうと思うようになってしまって。
だからこそ今は、「できるだけミニマムな時間で、いかに良い仕事をするか」をひとつの軸にしています。この道で手に入れた自由の使い道ですが、人生のシーズンによって少し変わると考えています。あるシーズンでは面白そうだと思える仕事や、純粋に楽しいこと、あるいは経済合理性がなくても大きな意義を感じられる仕事に関わっていきたいと思っています。別のシーズンでは仕事の比重を少なくして家族と良い思い出を作ったり、友達を家に招いて一緒に過ごしたり、何気ない時間を共有したりすることができたらいいなと思っています。いずれのシーズンでも、その選択を自分で決められること。生き方を選ぶ権利が、僕にとっての原動力です。
03
まず、Uinta Partnersについて言うと、自社が5〜10人くらいの規模になっていて、いろんなクロスボーダーのソフトウェア案件に取り組んでいる状態が理想です。糸島にも“グローバルなテック企業”がある状態を作りたいです。東京じゃなくても、地方からグローバルな仕事が生まれている、そんな景色が当たり前になっていたらいいなと思っています。「糸島にも、こういう仕事があるんだよ」って言える未来をつくれるのが、Uinta Partnersとしてのひとつの目標ですね。糸島に面白い人が集まって、関係性が生まれて、結果として仕事も広がっていく。そういう循環が生まれてほしいです。具体的には、「糸島移住手当」みたいな制度を、会社として用意できたら面白いなと思っています(笑)。
一方で、個人として取り組んでいる交際コーチングの活動においてのゴールは、「幸せに結婚している人が増えている」状態をつくれたらいいな、と思います。まだ始めたばかりなので、形はこれからですが、何かしらの形で発信もしていけたらと思っています。
コワルスキー貴幹さんに10のQuestions!
Q1
“The secret to doing good research is always to be a little underemployed. You waste years by not being able to waste hours.” (Amos Tversky)
これは、直訳すると
「優れた研究を生む秘訣は、少しだけ“余裕のある状態”でいること。時間を無駄にできないと、結果的に何年もの時間を無駄にしてしまう」
という意味です。
自分は、気づくと仕事やプロジェクトでスケジュールを埋めてしまうタイプなんです。でも、予定を詰め込みすぎると、頭の中がいっぱいになって行き詰まってしまうことが多くて。なので最近は、あえて少し余白を残しておくことを大事にしています。常に「ちょっと暇」なくらいの状態をつくることで、考える余裕や新しい発想が生まれると感じています。
Q2
長所:良い夫、父、友人であること。日本でもアメリカでもアットホームに感じられること。責任感強めなところ。
短所:心配性で、やや繊細すぎるところがある。悩みに陥りやすいところ。「本当にこのままでいいだろうか」「この事業はうまくいくだろうか」と、悩んでしまうところはあります。
Q3
妻と娘が最近、親子でヴァイオリン教室に通い始めたんです。その初めての発表会に行った時、先生のご家族が弦楽器五重奏を披露してくれて。家族で一緒に演奏する姿に、想定以上に感動してしまったんですよね。
「うちの家族でもこれをやりたい!」と思い、1ヶ月後にはチェロを買って、僕も同じ教室でレッスンを始めました(笑)。
Q4
95点です。
達成したいことに対する達成度合いだともっと低い点数になりますが、最近はなるべく自分の成果だけではなく努力も評価しようとしています。努力は結構しているので、高めな評価です。
Q5
”安全な実験”を繰り返すことで自分の道を切り開こう。
「The Pathless Path」の著者、Paul Millerdの言葉。
僕はもともとリスクを取りたがらない性格で、新しいものへの挑戦も恐れるタイプでした。
「失敗したらどうなるだろうか」「まわりの人からどう見られるだろうか」などと考えてしまう。人生やキャリアを「実験の繰り返し」と捉えることにより、自分の失敗を許せるようなマインドセットに切り替えることができました。結果的に、今までやってみた実験は、始めた当初想定した結果にならなかった場合でも、何らかの成果や成長があり、すべてやってよかったと思っています。
最近の「成功した実験」のわかりやすい例でいうと、ナレーションの仕事がまさにそうですね。子供の頃からアメリカのCMの声を真似したり、大学生の時に「声がいいね」と言われたりして、ぼんやりと「いつかやってみたい」と思っていました。
そこで、起業して手に入れた少しの自由(余白)を使って、まわりの人に「声の仕事がしたい」と意識的に口に出すようにしてみたんです。これもひとつの実験ですよね。そうしたら不思議なもので、ご縁が重なってベテランのナレーターさんへと繋がり、なんと大手企業のプロモーション映像の英語ナレーションを担当することになりました。小さな実験から、本当に新しい道が切り開けた瞬間でした。
Q6
数ヶ月家族でヨーロッパに住んでみたい。
大手自動車メーカーのテレビCMのナレーションがしたい。
誰かのキューピッドになりたい。
今はこの3つです。
Q7
糸島移住してからずっとハマっていますが、飲食店巡りです。3年間で100店くらいは行きました。個人経営の小さめな飲食店、本当に好きなんです。
Q8
日本中にある、ちょっとおかしい英語。
今はChatGPTなどのAIツールに翻訳させれば非常に精度の高い翻訳が出せるのに、今だおかしな英訳が日本中で散見されるのが、惜しいです。
例えばこの写真。アメリカでこの看板があったら、絶対に "dump" という表現は使わないんです。中学生が使うようなちょっと下品なスラング言葉なので(笑)。日本語では丁寧に書いているのに、英語訳では全く逆の印象を与えているという典型例ですね
Q9
「使命」と言うほど大きなものではないかもしれませんが、「社会のレールから少し外れた生き方をして、幸福に生きるロールモデルになりたい」という思いはあります。
高校生や大学生の頃の自分は、「就職して一生働き続けるのが正しい人生だ」と思い込んでいて、それ以外の生き方が想像できなかったというか、その存在を知らなかったんですよね。その延長線上で無理をして、20代後半にはコンサルの仕事で限界まで働き、倒れてしまった経験もあります 。
でも今は、糸島という自然豊かな場所で家族との時間を大切にしつつ 、適度に仕事を頑張るというバランスのよい生き方ができています 。昔の自分のように「このレールを進むしかない」と息苦しさを感じている若い世代や同世代に向けて、「こういう自由度の高い生き方もあるよ」と、自分自身の人生をもって証明していくこと。それが今の僕なりの役割なのかなと思っています。
Q10
「夢」は自分が考えられる「理想の状態」と捉えています。具体的には、自由を手に入れた状態で、自分が大切にしていることに時間とお金をかけられている状態です。全然大それたものになってないですが(笑)、これが叶っていたら、自分は充実した毎日を過ごしているはずで、それ以上のことはないなと思っています。
※本記事の情報は、掲載日もしくは更新日時点のものです。(更新日: 2026年03月02日)
Profile
プロフィール
コワルスキー貴幹/Takami Kowalski
株式会社Uinta Partners代表取締役/コーチング
日本生まれ・アメリカ育ちのハーフ。ブリガムヤング大学工学部機械工学科卒業。ベイン・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして勤務後、スタートアップの株式会社FLUXで執行役員を務め、2023年にUinta Partners(ユインタ・パートナーズ)を創業。
Uintaでは、日本に進出したい海外企業のパートナーとして、市場調査・販売代理・M&Aアドバイザリーなどを提供。並行して、SNS配信や個人向けのコーチング、ナレーションと言った活動にも取り組む。
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