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Wellness
「30歳でへそ出しはNG?」自由な服装ができない日本【セーリィーククリスティーナ美怜さん】
INFINITE POSSIBILITIES(無限の可能性)というテーマのもと、自らの選択で人生を歩む女性たちにインタビューする「#グッドバイブスウーマン」。第一回にご登場いただくのは、鎌倉を拠点に活躍するヨガインストラクターのセーリィーククリスティーナ美怜さん
2024.05.14公開
ヨガやサーフなどのスポーツや、さまざまな場所へ旅をする。そんな姿を投稿しているSNSを拝見していると、「ヘルシーで、いつも笑顔で、常にポジティブ!」というイメージの美怜さん。インタビューで実際にお話すると、“いい意味で”イメージを覆されました。連載タイトル通りグッドバイブスなエネルギーは発しつつも、肩の力は抜かれていて、自然体の美怜さんがそこにはいました。すっと、地球になじんでいるような。「自然体ってこういうことをいうんだ!」ということを体現していて、本質的なウェルネスを実現しているように感じられました。
そんな美怜さんに、インタビューのはじめに改めていまのお仕事の内容を聞くと、「実は、今月(インタビュー時の3月)いっぱいでいまやっているお仕事、全部やめるんです」との返答が。まさに変容の時期のインタビューとなりました。美怜さんがヨガを通して発信していきたいこととは。そして、ありたい自分の姿とは。
美怜:そうなんです。ヨガに関するお仕事をやめるわけではなく、レギュラーでやらせていただいているインストラクターのお仕事をいったんストップします。4月からL.A.を中心に展開をしているヨガスタジオの立ち上げに関わることになり、インストラクターの養成などをやらせていただくことになりました。現場は離れますが、自分のステップアップになると感じているので、とてもワクワクしています。
美怜:シンプルな回答ですけど、「すべての人が、本当にやりたいことや好きなことをしながら生きていける世界になってほしい」と思っています。とくに現代はSNSの影響で、よくも悪くも、誰かと比較しやすい時代。たとえば誰かに憧れて、「その人になりたい!」と真似するのはちょっと違うのかな、と個人的には思っています。人をリスペクトすることはとても素敵なことだけれど、“自分じゃない誰か”に自分を投影して背中を追いかけるのは、自分ではなくなってしまうことと同義だと思っていて。みんながそれぞれ自分らしく生きていけば、それぞれ足りない部分を補っていけるし、何より無理なく生きやすくなると思うんです。それが私にとってはヨガなど体を動かすことが有効に働いていると感じているというだけ。もしかしたら私も将来的にはヨガではなく別のことをしているかもしれないですし、それは人によってだったり、そのときの状態によって異なると思っています。
美怜:私が経験を通して感じたのは、「マインドと身体はリンクしている」ということ。柔軟な考え方が身についている人は胸も開きやすいし、反対に頭がガチガチだと体もガチガチ(笑)。ヨガは健康のためやケガをしづらくなるなどほかのメリットもたくさんあると思うのですが、頭をやわらかくするためにヨガはとても役立つと思います。頭をやわらかくしたほうがいいのはわかっていても、なかなか意識だけでできないじゃないですか。マインドと身体は相互関係にあるので、肉体からアプローチすることで自然と頭がやわらかくなっていくと感じています。
美怜:はい。頭がかたいということだけでなく、いろんなことを我慢している人にも同じことが言えます。たとえば、「母親だからしっかりしなきゃ」などの「こうあるべき」にとらわれてしまっていたり、ほかの人の目がどうしても気になるという方。要は頑張りすぎてしまっている人は、同じように胸が開かないことが多いです。
美怜:マインドも身体も変わったと思います。ヨガを始める前は低体温で、平均体温は35度台。それが36.5度にまで上がり、風邪もひきにくくなったりと体調がととのっていきました。体の調子がいいと、自然と思考もポジティブになっていきました。マインドがととのうと、呼吸も深くなっていき、呼吸が深まると体調もよりととのうんです。呼吸とマインド、身体はすべてつながっていると実感しました。ポジティブ思考が絶対いいとも限りませんが、考え方の転換ができるようになったのは大きいです。自分にとってしんどいことが起きたとしても、以前だったら「なんでこんな経験しなきゃならないんだろう」とネガティブに捉えていたことも、「これはきっと自分のために経験させてもらっているんだろう」と考えられるようになりました。
美怜:ヨガを始めたのは10年ほど前。大学生の頃で、スポーツジムで開かれていたヨガレッスンに参加したことがきっかけでした。ヨガをすると心身ともに気持ちよく、深く呼吸できることに感動して。そこからヨガにハマっていきました。
もうひとつ、母も若い頃にインドの山奥で3カ月間ヨガの修行をしたそうで、家で日常的に三点倒立する姿を小さい頃から見ていました。それゆえ、ヨガはとても身近なものとして見ていたので、私がヨガの世界に引き込まれていったのはいたって自然なことだったのかもしれません。
美怜:母が20代の頃、当時はバブル時代。自分で働いてお金を得て、ひとりで世界一周していたらしいのです。旅のなかでインドに寄り、ヨガに出会ったそう。さすがに携帯などもないような時代に女性ひとりで世界一周する人は少なく、家族を始め周囲にはかなり反対されたみたいです。
美怜:そんな自由なマインドを持った母だったので、一般的なお母さん像に比べると私もかなり自由に育ててもらったと思います。興味があることはすべてやらせてもらっていました。ちょっと気になったら一回は挑戦してみたいタイプ。一回きりで終わったものもたくさんあります。自分に合うかどうかはやってみないとわからないし、やらない後悔はあまりしたくない、という気持ちがあります。
美怜:それも素敵なことですが、真面目にストイックに何かをやることはあまり好きではないんです。部活に入るのも続けなければならないのでイヤだったし、団体で戦って勝ち負けを決めるのも好きじゃない。だからサーフィンやヨガなど、単体でできるスポーツが好きなんです。真面目さも大事なことだとは思うのですが、これからの時代は楽しくやることのほうが、大事なんじゃないかな。寿司職人も、いままでは何十年とかかるといわれていたのが、いまは短期間でなれたりするじゃないですか。ヨガもあまり完璧なものにこだわっていなくて、自分がやりたいように楽しくやっているだけ、といったイメージなんです。
美怜:比較的、まわりの目は気にしないほうかもしれないです。
美怜:昨年ありました。とあるイベントでヨガウェアの出店を手伝ったのですが、そこのブランドはわりとカラフルで派手なデザインが多いんです。見にきてくださった女性のお客さんたちみんな、「かわいい〜!」と言ってくれて、どれにしようか迷っていたりするのですが、その姿を見て隣にいる旦那さんが、「こんな派手な色を着てどうすんの?」「恥ずかしくない?」「お姉さん(美怜さん)が着ているから似合うんだよ、だまされちゃダメだよ」とか平気でいろいろ言ったりしていて……。「いやいやいや〜!」と心のなかでツッコんでいました。女性自身も「そうだよね〜」と納得していたり。この出来事は結構、ショックでした。そんなふうに言われてなぜ納得してしまうんだろう…と思って悲しくなってしまって。
あとはご近所の知り合いで、個性的で派手なものが好きな方がいらっしゃって、その子どもが「お母さん、そんなの(派手な服)着たら恥ずかしい」と言ったりしていたんです。それってパパが同じようなこと家で言っているんじゃないかなぁと思っていて。そんな人ばかりじゃないかもしれませんが、もしそんなふうに言われたとしても好きなものを身につければいいのに、とは思います。
美怜:何を言われても好きなものを着ればいいし、その人の自由! 私も以前、自分がデザインした洋服を着て近所を歩いていて、それがクロップド丈のトップスで、わりと短い丈なのでお腹がチラッと見えてしまうんです。そしたら小さい頃から顔見知りのおじさんにバッタリ会って、「美怜ちゃん、30歳でそんな短い服着て大丈夫なの?」と言われたんです。<30歳で短い丈の服を着てはいけないの? 30歳になったら大人の服を着ないといけないの? そもそも大人の服って何?->と、さまざまな思いが溢れ出てきました。既成概念の植え付けってすごいなぁ、といろいろ考えてしまいますね。
美怜:私にとってのリフレッシュは大自然に行くことです。私は仕事とプライベートは完全に分けたいタイプ。ヨガレッスンのときはスタジオに入った瞬間からお仕事モードがスイッチオンされるので、ヨガは好きだけどリフレッシュにはならないんです。友達と旅行をしても、できればヨガを教えるとかはしないほうがうれしいかな(笑)。100%プライベートという感覚で楽しみたいので、そこに仕事は持ち込みたくなくて。昨年は熊本や宮崎、福岡の糸島へひとりで行ってきました。とくに熊本の阿蘇山のまわりはとてもエネルギーが高くて、癒されました。
美怜:自然と対話をしている感じがして、とても落ち着くし、心身ともに緩んでいきます。自然のなかに身を置くことで、自分を充電して、満たしてあげているんだと思います。それが自分をいい状態に保つための方法です。
ヨガのレッスンももちろん、生徒さんからパワーもいただくので元気になります。ただ、たくさんの人と接することがあるとエネルギー当たりすることはあります。
美怜:そうだと思います。だからこそ、まわりに何もない自然に行きたいと思うのだと思います。自然が“本当の自分”に戻してくれる。これが自分にとっての処方箋です。あと、最近歌を始めたんです。歌うこともいい発散になっています。
美怜:ゴスペルを習い始めました。もともと自分の声は好きではなくて、みんなで遊んでいてもカラオケ行くなら帰るって言っていたくらい。そんな私が歌を始めたきっかけは、不思議なシンクロが重なったことにあります。
ある日湘南の海に潜ってあがってきたとき、一緒にした友達に「美怜ちゃん、海に潜ると声が変わるよね」と言われて、「なんとなく美怜ちゃんに合う気がする」と湘南在住のゴスペルの先生を教えてくれたんです。翌日の朝、私も気になってその先生のことをネットで調べていて、そのあと電車に乗ったらその先生が同じ車両に乗ってきたんです。これは引き寄せてしまったと思って話しかけたら、自宅でレッスンしているからぜひ来てみてとおっしゃっていただいて。それから通い始めました。
美怜:最初はすごく歌うことが恥ずかしかったのですが、どんどん楽しくなっていきました。歌を歌うというより“自分を表現する”という感覚。その先生は「魂で覚える」という教え方で、歌詞を絶対に見ないんです。文字で見て頭で考えるより体で覚える。耳で聞いて「音」で覚えるので、ときどき言葉がわからなくて鼻歌になっちゃうんですけど、それでいい。そんな教え方も好きです。まさか今世で歌を楽しいなんて思うと思っていなかったし、自分で勝手に決めつけていることってたくさんあるんだな、という学びでした。
美怜:天気がいい日はベランダでゴロンと寝転んで、太陽を全身で浴びて光合成をしています。あとは本を読んだり料理を作ったり洗濯をしたり。家事に没頭することは、瞑想のひとつだと思っています。反対に動かず目をつむって瞑想すると、必ず寝ちゃうんです(笑)。自分は動く瞑想のほうが得意のようです。
あとはたくさん寝ること。都内で仕事があるときは、まとめてアポを入れてしまいたいのでパンパンに予定を詰めてしまうんです。帰ってきたときには疲れ果てているのでそのまま10時間くらいは寝てしまいます。翌日が休みだったら家にずっといてゴロゴロしています。鎌倉に住む前、都内に住んでいたときはどんなに疲れていても外に出てしまっていたのですが、鎌倉は土地のエネルギーがよすぎて居心地がよく、家にずっといても落ち着くし、一歩も外に出ない日もある。住む場所との相性はとても大切だと感じました。
美怜:一緒に身体を動かしたり、コミュニケーションを取ったりすることで人とのエネルギー交換をしているような感覚です。
私のヨガレッスンを受けて楽しかったとか、自分と向き合えたなど、ちょっとでも変化があったらうれしい。これからは現場は離れますが、ヨガを通してそういったエネルギー交換ができる場はつくっていきたいです。コロナ禍の間は対面ができずオンラインヨガをしばらくしていた時期もあったのですが、私はどうもオンラインは苦手で。オンラインがあることで普段は会えない人にも会えるというメリットはありますが、やはり同じ空間にいて、エネルギーの共有をしながら接することができるリアルのほうが私は楽しい。電波を通してだとどうしてもそのエネルギーを感じにくくなってしまう気がします。
美怜:まず自分の経験をお話すると、昔はわりとお金に対するブロックがあったんです。お金によって人がダメになっていく姿を見たことがあったので、以前は「お金をもらいすぎないほうが幸せである」という概念がありました。ですが、所属していた会社をやめてフリーランスになり、それと同時に鎌倉へ移住したときに、仕事がたくさん入ってきたんです。自分に合う土地に行き、枠から飛び出して自由になった瞬間に入ってきたので、結局のところどれだけ人生を楽しむかなのだということは感じました。
美怜:もちろん生活をするためでもあるけれど、一番は自分の体験と経験、新しい景色を見るため。いろんなところへ旅をしたり、海外へ行ってその文化や伝統に触れたい。そのために使うお金は私を豊かにしてくれます。ただ、自分の器以上にお金が入ってくると人間をダメにしてしまうのではないかと思っています。その人の意識レベル、精神レベルに見あったお金をいただくことで、上手に活用できると思います。
美怜:大事なことだと思っています。私はパートナーシップにおいても養ってほしいという考えはなくて。経済的に頼ってしまうことでそのぶんの取引みたいなものが生まれてしまうのはイヤだし、依存もしたくないんです。結婚してからやむを得ない事情で別れたいと思っても、経済的な余裕がないから離婚できないという話をたまに聞いたりします。そうなるとお互い辛いじゃないですか。もちろん、そんなことがないにこしたことはありませんが、結婚して出産してもなるべく自分の力でいろんな経験をしていきたいので、なるべく好きなことで働いていたいとは思っています。
美怜:「自分を飾らず、自分らしく、そのままの自分でいる」ということは大切にしています。そのままといっても、何かに悩んでいるとかネガティブな状態だとか、そういったシチュエーションのままでもいい、という意味ではないんです。“本来の自分に還った状態”ということなので、その戻り方を知っておくことが大切だと考えています。その戻り方=処方箋は十人十色。それがわからないときはたくさんもがくと思います。だからこそ、さまざまな経験を通して、自分は何が好きで、何が心地いいのかを知っていくこと。アーユルヴェーダやヨガが合う人もいれば、合わない人もいると思います。みんながみんな、その方法を見つけて、そのままの自分でいられるような世界になることを心から願っています。
インタビューが終わり、「このあとはちょうどゴスペルの先生とランチなんです!」ととびきりキュートな笑顔を見せてくれた美怜さん。内側から滲み出るような光のオーラがまとい、その佇まいはまさに“Muse”。そんな美怜さんというフィルターを通して体験するヨガだからこそ、多くの人を魅了するのだろう。
取材・文/竹尾園美
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