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LGBTをテーマにした映画19選。今こそ知りたいおすすめの作品を集めました
昨今耳にするようになったLGBTという言葉ですが、実は映画作品のテーマとして取り扱われることも数多くなりました。今回はそんな中からおすすめしたい作品を厳選しています。LGBT以外のセクシュアリティも含む、"LGBTQ"に触れられる作品もご紹介していますよ。
2021.02.11公開
LGBTをテーマにした映画とは、セクシャルマイノリティの方々にスポットを当てて製作されたもののことを指します。LGBTは、「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の頭文字から構成された言葉。
エンターテイメントでありながらも、セクシャルマイノリティへの理解促進や、社会的な問題提起といった役割を果たしています。純粋に映画そんものを楽しめる一方で、セクシャルマイノリティに対する考えを深めることが出来ます。
LGBT映画を見るときは、製作された年代にも着目してみましょう。年代ごとに、セクシャルマイノリティの描き方にも違いが見られます。1960~1970年代は、LGBT映画の黎明期。欧米において、ゲイを取り扱った本格的な洋画が製作されるようになりました。
1980年代に入ると、LGBT映画の多様性が増していきます。ハードゲイから純愛を描いたものまで、実に様々。ゲイ・カルチャーへの取り扱いが深まった時期とも言えます。1990年代に入ると、エイズを題材にしたものが。HIV感染者に男性同性愛者が多かったことから、社会的に差別が激しくなった時期のものです。
2000年以降は、LGBTという概念が浸透するようになり、数多くの名作が制作されるように。ドキュメンタリーも積極的に作られ、レズビアンやレインボー家族、トランスジェンダー映画なども花開きました。
LGBT映画は、LGBTQに包括されるものになります。性の多様性は、「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の4種類だけでは縛れないという考えが普及してきたためです。
LGBTQの「Q」には、2つの意味が含まれています。1つ目は、「変態」、「風変わりな」を意味する「Queer(クィア)」。セクシャルマイノリティ全体を差別する侮蔑語でしたが、だんだん当事者が自分たちを自己肯定的に表現する言葉として使いはじめ、1990年代を境に「多様な性のカテゴリーを集約する言葉」に転化しました。性のカテゴリーは、LGBTよりもさらに幅広いものになります。
2つ目は、性指向や性自認が定かでないことを意味する「Questioning」。「自分の性別が分からない」「性的自認や指向がまだ決まっていない」「意図的に決めていない」といったセクシャリティが該当。LGBTとLGBTQ映画の境界線は曖昧で、最近ではすべてを包括してLGBTQとしているケースも。
『キャロル』は、1950年代のニューヨークを舞台に女性同士の恋愛を描いた洋画。同性愛が法律で禁じられていた時代のニューヨークで、惹かれ合ってしまった2人の人生を描きます。1952年に出版された『The Price of Salt』という小説を原作にしたもの。
小説の作者はアメリカでも知名度があった女性ですが、1952年の発売当初は他の作者名で発表。1990年になって、自身の自伝的小説であったことを公にしました。それだけ1950年代という時代は、同性愛についてデリケートであったことが伺えます。
『ハンズ・オブ・ラヴ』は、実話をベースに2015年に公開された洋画。州のパートナー法のもと、夫婦となった女性同士を主人公としています。しかし、パートナー法と婚姻関係は別のもの。末期がんに冒された女性が、婚姻関係でなければ受け取れない遺族年金を、パートナーに残すため闘う姿が描かれています。
2015年は、奇しくも全米で同性婚が認められるようになった年。映画によって、同性婚が合法となるまでの、過渡期の制度の欠陥が浮き彫りにされました。
『ムーンライト』は、黒人の貧困社会の中のセクシャルマイノリティを描いた洋画。少年の成長を3章に分け、3人の俳優が演じ分けました。重いテーマを扱いながらも、繊細に描かれた美しい愛の物語です。
第89回のアカデミー賞では、作品賞・助演男優賞・脚色賞を受賞。初めて主要賞を受賞したLGBT映画であることから、アカデミー賞の歴史を変えた1本と評価されています。
『君の名前で僕を呼んで』は、LGBTのみずみずしいラブストーリーを楽しみたい方におすすめの洋画。17歳の少年と24歳の青年の、ひと夏の恋を描いています。初恋ならではのドキドキ感と戸惑いは、どんなセクシャリティの人にも共通する感情なのだと教えてくれます。
『ムーンライト』の翌年の第90回アカデミー賞で、脚色賞も受賞。続編の可能性も示唆されているので、楽しみにしているファンも多いとか。
『ナチュラルウーマン』は、トランスジェンダーの主人公を描いた作品。最愛の恋人の死をきっかけに巻き込まれていくトラブルの根源には、トランスジェンダーゆえの理不尽な差別が。
チリで製作された映画で、第90回アカデミー賞の外国語映画賞を受賞。トランスジェンダーの役を、トランスジェンダーの俳優が演じた洋画としても話題に。
『彼らが本気で編むときは』は、文部科学省選定作品になっているおすすめの邦画。LGBTをテーマにした映画は、洋画だけでなく邦画でも増えつつあります。ベルリン国際映画祭で、邦画として初めてテディ賞審査員特別賞を受賞。
トランスジェンダーの元男性と、心の美しさに惹かれてすべてを受け入れる恋人。そんなカップルの前に現れた、母に置き去りされた少年。3人の心温まる交流の物語です。
『劇場版おっさんずラブ』は、2018年に大きな話題を呼んだドラマを映画化したもの。男性同士の恋愛が、純粋な恋愛ドラマとして楽しめる邦画となっています。
作品内ではLGBTQの悩みや葛藤にはあえて触れていないことから、同性愛が否定されない世界が当たり前のように感じられる邦画作品です。ある意味、目指すべき社会の形の一つと言えます。
『his』は、『おっさんずラブ』とは対照的な、男性同士の恋愛を描いた邦画。「好きなだけでは、どうしようもない」のフレーズとともに、LGBTQが直面しやすい問題が扱われています。
周囲の不理解や社会的な問題、法的問題などに直面しながら、立ち向かう姿が印象的。同性愛者の生き辛さに胸を打たれるとともに、胸が温かくなる邦画作品です。
『ボーイズ・ドント・クライ』は、性同一性障害の女性にまつわる実話に基づいた洋画。主人公は、性自認を男としながらも、身体的には女性であったことから凄惨な体験をします。
1990年代に性同一性障害を取り扱った珍しい作品ですが、実話であることを深く受け止めるべき映画。LGBTQの、尊厳や権利について考えさせられます。
『ミルク』は、ゲイを公表しながら、アメリカで初めて公職に就いた男性の実話に基づいた名作映画。マイノリティの権利獲得のために闘った、偉大な先人の話です。
映画の舞台となるのは、1970年代のアメリカ。今以上に激しい差別意識の中、身の危険を感じながらも活動を続ける姿は、実話とは思えないほど勇敢。勇気づけられる作品です。
『チョコレートドーナツ』は、1970年代のアメリカでの実話に基づいた作品。ゲイカップルが、育児放棄された障害児を引き取り家族として幸せに暮らすも、その先には悲劇が。
映画の中での差別もさることながら、日本では「ゲイカップルと障害児の映画」であることを理由に上映館が1館だけだったという実話が。名作にも関わらず、現実でも偏見に直面した作品。公開から10年経っておりませんが、それがマイノリティに対する社会のリアルなリアクションだったのです。
『フレディ・マーキュリー神話』は、伝説のロックバンド「クイーン」のボーカルの生涯に迫るドキュメンタリー映画。死の間際に両性愛者であったことを公表し、数々の名曲を残しました。
フレディ・マーキュリーの映画として有名な『ボヘミアン・ラプソディ』よりも、さらにLGBTとしての側面も追求しています。クイーンのファンにもおすすめのドキュメンタリー。
『ジェンダー・マリアージュ』は、「全米を揺るがした同性婚裁判」という副題を持つドキュメンタリー映画。2008年にカリフォリニア州で、結婚を男女間のみに限定する法案が通過。合法であった同性婚が、再び禁止に。
ドキュメンタリーでは、法案を人権侵害とし、州を提訴した2組の同性カップルに密着しています。5年にも渡る、LGBTの闘いの実話を記録したもの。
エイズに対する偏見と差別と闘う若者の姿を描いた、『BMPビート・パー・ミニット』。舞台となる1990年代は、エイズ感染者が多かった同性愛者への風当たりがきつかった時代になります。明るいパッケージとは裏腹に、内容は重ため。
BMPは、エイズ感染者の支援団体の活動を描いたもの。完全なドキュメンタリーではなく、ドキュメンタリー・タッチの作品ですが、監督自身が団体での活動経験を持ちます。
『プリシラ』は、3人のドラァグ・クイーンの旅を描いた、コメディ映画。三者三様のセクシャリティを持つ3人は、旅先で様々なトラブルに出会いながらも、陽気に旅を続けます。
しかし、コメディ調の中にもLGBTへの差別に直面するシーンが。笑ってほっこりした後に、しんみりと考えさせられる映画作品となっています。
ドキュメンタリー小説を原作にした『フィリップ、君を愛してる!』は、詐欺師の一途な愛を描いたラブコメディ。刑務所で運命の相手と出会い、彼に愛を伝えたい一心で詐欺を繰り返すことに。
コメディ俳優として有名なジム・キャリーが主演を務め、重い雰囲気になりがちなシーンも軽快に描きます。果たして、主人公は「君を愛してる!」と伝えることができるのでしょうか。
『タンジェリン』は、トランスジェンダーの女性たちの友情を描いたコメディ映画。偏見にさらされながらも、力強くポップに生きる娼婦たちの姿が印象的です。
主演に俳優経験のないトランスジェンダー二人を起用したことと、全編を通してスマホで撮影が行われたことも話題に。低予算ながらも数多くの映画賞を受賞しているコメディ映画です。
ここまでLGBT映画をまとめてきましたが、「Questioning」の意味を含んだLGBTQ映画にもフォーカスを当ててみましょう。性指向のゆらぎや、定められない苦悩などが感じとれる、おすすめの名作です。
『ブローバック・マウンテン』は、LGBTQ映画の金字塔とも言える名作。2人のカウボーイの20年間に渡る愛を描きながら、ゲイの男性が持つ苦悩を社会に広く知らしめました。
男性を愛しながらも、幼いころから刷り込まれてきた差別意識に縛られ、自己嫌悪と愛の狭間で苦悩する姿が印象的。「君を諦めることができたらいいのに」というセリフに、心打たれた観客も多数。全世界で約1億7800万ドルの興行収入を記録した名作です。
『アデル、ブルーは熱い色』は、ブルーの髪の女性に心惹かれた主人公が、自分のセクシャリティについて疑問を抱いていく姿を描いたもの。とくに、出会いのシーンの心のゆらぎの描写は秀逸。偶然の再会を経て、戸惑いながらもいつしか恋に落ちていきます。
リアルなラブシーンで批判を受けるも、交際する2人の性的な部分を避けて通ることは不自然と、LGBTQ映画を新たな段階に押し上げた名作。そのためレーティングがR18となっています。
1960年代までは製作さえも禁止されていたLGBT映画は、いまや当然のものに。純粋にエンターテイメントとして楽しめる作品や、性的多様性について考えが深められるもの、コメディチックに描いたものまで様々。
邦画でも数多くのLGBT映画が作られている今こそ、おすすめの名作に目を通してみるとき。社会現象となっているジェンダー問題と照らし合わせながら、自分の身の回りの方、あるいは自分自身の性自認への理解に繋げてみてください。
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