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Wellness

中絶を経験した私の、過去との付き合い方

私が中絶を経験したのは4年前の夏、新卒1年目の時でした。現在は企業でキャリアコンサルタントとして働きながら、中絶経験者のためのコミュニティ作りや性教育支援等をしていますが、中絶という経験を乗り越えるには長い時間がかかっています。同じように中絶を経験した人や中絶経験者をサポートしたい人へ、私なりの過去との付き合い方をご紹介します。

2021.07.28公開

当時の状況

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「避妊具無しでも妊娠しない」という自信

今でこそ、性教育支援等の活動をしている私ですが、当時は性に関するトピックは恥ずかしいと考えていたことに加え、過去に性交渉の経験もありませんでした。避妊の仕方すら他人任せで、避妊をしていなくても自分に限って妊娠しないだろうと思っていた、いわゆる無知。中絶も自分とは全く無縁のことだと考えていました。

新卒1年目で妊娠した私

当時、私は22歳。新卒1年目の夏で初めての海外出張も決まり、これからもっと仕事を頑張ろうと思い始めていた時期でした。相手は当時3年ほどお付き合いをしていた1歳下のパートナー、まだ学生でした。妊娠判明の前日に大好きなレバーを食べた時に吐き気がし、当月に生理が来ていないこともあり妊娠を疑い、妊娠検査薬をしました。結果は陽性でした。

パートナーと母親に伝える

すぐに私は当時のパートナーに妊娠の事実を伝え、産むか産まないかを一緒に考え始めました。母にも伝えました。母は、「とりあえず体調第一に。あなたの味方だから」と言ってくれたのを今でも覚えています。

出産を憚った課題

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新卒入社し、まだ試用期間だった私は産休育休が取得できる立場にありませんでした。もし出産をするとなれば、退職しなければなりません。まだ社会人として一歩を踏み出したばかりの私に、周りの同世代から遅れを取る勇気はありませんでした。

改めて、妊娠や出産をする上で、女性がプライベートとキャリアの両方を確立していくにはかなりのハードルがあることを知りました。

経済的不安

新卒1年目の私とまだ学生だった当時の彼には、十分に子供を育てられる経済力はありませんでした。政府や自治体が提供している出産・育児の補助金やサポート制度についてもたくさん調べましたが、他国と比べて不足していることに改めて気づき、この立場で、この国で、十分な育児は難しいと感じました。

周りには親にサポートして貰えば良いとも言われましたが、自分の力で子供を守れないなら育てるべきではないと、私は思いました。

中絶という選択

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最終的に私は当時のパートナーと話し合いの上、中絶を選択しました。

中絶手術の種類

日本ではソウハ法と吸引法の2種類が主流です。私がお世話になった病院では、吸引法を行っていたので、特に当時こだわりのなかった私は吸引法で手術をしました。

吸引法とは端的に説明すると、細い金属でできた掃除機のような物を子宮口から挿入し、子宮内の内容物を吸い出す方法。実際に手術をする時間は約15分で、全身麻酔が切れる3時間後くらいまで病院のベッドで安静にし、その日のうちに帰宅できます。

もう1つのソウハ法をわかりやすく説明すると、スプーンに似た形状の細い器具で、内容物を掻き出す方法。実は日本で行われている中絶手術の多くは、吸引法よりもソウハ法を取り入れている。しかしWHO(世界保健機関)は、「ソウハ法は、子宮内を傷つけるリスク等がある時代遅れな方法」だと指摘しており、現にほとんどの先進国では0~4%しか同方法を中絶手術に取り入れていません。

中絶手術にかかった費用

病院や地域、母体状態によっても値段は変動すると思いますが、私の場合は以下のような費用が発生しました。

中絶にかかる費用

  • 事前検査(感染症、血液、超音波等):10,000円
  • 中絶手術(吸引法):100,000円
  • 術後検診:5,000円
  • 術後低容量ピル(生理周期を安定させるために必ず一定期間服用します):毎月3,000円
  • その後、任意ではあるが半年に一度経過検診、子宮癌検査等:各5,000円〜

水子供養

中絶後、胎児がちゃんと天国に行けるように水子供養をする人も多くいます。もちろん中絶後の胎児に対する思いは人それぞれだと思うので、必須ではありません。私は自分の気持ちにけじめをつけてしっかり前に進もうと思い、供養をしました。通常は水子供養を行っているお寺に事前予約し、指定の日時に出向いて供養をしてもらいます。供養費は寺院から提示される事はありませんが、お布施という形でお渡ししました。胎児への手紙や供えたいものがあれば、なんでもその時に寺院に渡すことができます。

中絶を経験して今思うこと

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中絶後の精神的ダメージの大きさ

中絶後も数年間は同じパートナーとお付き合いをしていました。彼を含めて、母親や親しい友人数人のサポートもありましたが、やはり精神的ダメージはかなり大きかったです。

1つの命を自分の意思で亡くしてしまった罪悪感と無力感に襲われて、中絶後、特に1年間は毎晩のように泣いていました。外で赤ちゃんや子供の姿を見かけるだけでも涙が出てきたり歩けなくなったりしました。

でも中絶を決断したのは自分

私は自分の意思で中絶を決断したケースです。当時の彼と話し合いの上で、出産はベストではないという結論にいたり中絶をしました。

ベストではないに至った理由はたくさんありますが、私の中で最も大きかったのはキャリアです。「自分の母親のように、もっと色んな経験をして自分自身が成長し、経済的にも自立してから赤ちゃんを産みたい」と強く感じました。

中絶という経験が辛くなったり、後悔しそうになったときは、何故中絶を選んだのか理由を思い出して、その選択が無駄にならないように行動しています。

経験をシェアできる世の中に

日本ではまだ「中絶=タブー」というカルチャーがあると思います。しかし日本人女性の4人に1人が経験していて、それと同じ数だけ相手の男性がいるのに、なぜ一人で抱え込まなければいけないのでしょうか。

私は周りに打ち明けたり、こうして公にspeak upすることで自分の気持ちが解放されました。もちろん中絶数がゼロになることがベストなので、同時に事前予防ができる性教育の普及も重要だと考えています。

一方で世の中には100%確実な避妊は、不妊手術をする以外存在しません。女性に産む権利があるなら、産まない権利もあるはず。「中絶は女性の自由を守る人権である」という理解が、より多くの人に広がって、助け合える社会ができたらと思います。

■Writer's Profile

あんぬ

20代OL/大手外資系キャリアコンサルタント/バックパッカー/新卒1年目で中絶を経験/誰もが生きやすい世の中実現のため、性教育支援や中絶経験者コミュニティー設立等活動中。

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