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Culture

「私のバイブル」 vol.8/女優・安生めぐみさん

#私のバイブル

自身が持つ才能を活かし、クリエイティブな生き方をしている素敵な人に、ミューズたちの指針や道標となり、My Museの在り方を体現するような映画や本、アートをご推薦いただく「私のバイブル」。

2025.06.18公開

『レ・ミゼラブル』 U-NEXTにて配信中 © 2012 Universal Pictures. All Rights Reserved.

第8回には、日本でミュージカルとアクティングを学んだ後に渡米し、現在アメリカ・ロサンゼルスで女優として活動する安生めぐみさんにご登場いただきます。人に感動を与える職業に従事する安生さんの感性を刺激した作品とは? 好きなことに向き合い続けた日々がいまの自分を作っていると言う安生さんから聞いた、夢と情熱について想わせた3つの作品をご紹介します。

PROFILE
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■安生めぐみ
俳優。昭和音楽大学短期大学部ミュージカル科特別賞を受賞して卒業後、アメリカの演技手法を学ぶ。日本で俳優活動をした後、2011年に渡米。渡米10年目にして、ポール・トーマス・アンダーソン監督映画『リコリス・ピザ』(アカデミー賞作品賞含む3部門ノミネート)のキミコ役に抜擢され、同年NBCの人気ドラマ『グッドガールズ:崖っぷちの女たち』シーズン4にも出演を果たす。


©️集英社オンライン「ロードショー」より(撮影:小田原リエ)
@megumi_anjo

孤独だったトレーナーが『ミリオンダラー・ベイビー』ボクサーのために選んだ、愛ゆえの結末

Million Dollars Baby
『ミリオンダラー・ベイビー』 U-NEXTにて配信中 ©2004Lakeshore Entertainment. All Rights Reserved.

「私がご紹介したいいずれの3作品も、人生に対する愛と情熱が詰まった映画です。なかでも同作は、学生時代にミュージカルの舞台に夢中だった私を、ハリウッドの作品やメソッドアクティング(俳優が自分の実体験や感情を役に投影し、よりリアリスティックな表現を行う演技法)へ導いた作品ですね。

小学生のころから、テレビドラマなどが大好きで、映像や演技の道に進みたかったのですが、父の“大人になったらやりなさい”という言葉に、一度、立ち止まったことがありました。歌やダンスにも魅了されていた私は、ミュージカル学科に進学することにしました。そのころ、まだ映画には触れる機会は少なかったのですが、主役のマギーを演じたヒラリー・スワンクの演技に衝撃を受け、私もこのような演技をしてみたいと心から感じたんです。真の情熱がここまで傾けられたものに強く惹かれ、ハリウッドへの夢が膨らみ始めました。ちょうど『ラスト・サムライ』や『硫黄島からの手紙』などで、日本人俳優がハリウッドで活躍できる道筋が見えてきた時代にもさしかかり、アメリカ・ロサンゼルスへ移住する決意を固めました。私の人生を変える一部になった作品です。

それだけでなく、この作品内で描かれている、血のつながりや実の家族関係を超えた愛の表現も、とても興味深いですね。それらを表現している、ヒラリー・スワンクはじめ俳優たちの心からの演技、リアリティのある演技も必見です」

やっぱり、ミュージカルは素晴らしい! 至高が揃った『レ・ミゼラブル』

Les Miserables
『レ・ミゼラブル』 U-NEXT にて配信中   © 2012 Universal Pictures. All Rights Reserved.

「俳優たちの必見の演技と言えば、ファンテーヌを演じるこの作品でのアン・ハサウェイは圧巻ですね。上映中ずっと、感動で涙が止まりませんでした。

同作は、ブロードウェイなどで発表されてきたミュージカルの名作ですが、ミュージカル映画ならではの長所が余すことなく表現されていました。ミュージカルの舞台では、後ろの席の観客にも伝わるような大きさの表現で演じることが必要ですし、歌を届けるためにストレートな歌唱力が求められます。ですから、アン・ハサウェイの泣きながらささやくように歌うところや、涙がこぼれ落ちる瞬間も映し出されるなど、映画でなければできない描写にとても感銘を受けました。舞台では、繊細な表情の変化や目の潤みまで見せることは難しいですから。また、通常のミュージカル映画では演技と歌の収録が別々になることも多いのですが、同作は歌をその場で “生”収録しているので、舞台のような臨場感も味わえるのです。ミュージカルと演技。私が情熱をもって学んで、続けてきたもの、そして好きなものが凝縮され、ミュージカルの本質的な素晴らしさが詰まっていて、心の底から感動しました!

また、同作も、壮大な愛と絆の物語でもあります。私自身は、両親や家族との関係には恵まれてきましたが、ヒュー・ジャックマンが演じたジャン・バルジャンの人としての成長も素敵な描かれ方で、なぜか血のつながりの超えた親子のような愛に、とても惹かれるところがあるみたいです」

『ソウルフル・ワールド』が問う、“あなたはどんな人生を生きていきたい?”

Soulful World
『ソウルフル・ワールド』 ディズニープラスで配信中 © 2025 Disney/Pixar

「多くの人が自身の生き方を見つめ直したであろう、2020年に公開された作品です。主人公は、ジャズ・ミュージシャンとして生きていきたいという夢をもっているけれど、生活のために音楽教師として勤めているジョー。ある日事故が起きて、人間界に生まれる前の魂(ソウル)たちの世界へ迷い込みます。

ジョーは、母親から、“フルタイムで、年金や保険の支給があるような安定した職業を選びなさい”と言われるけれど、“自分の情熱はそういう条件とは別のところにあるんだ”と初めて反抗して、ジャズ・ミュージシャンとして生きよう、と生きる意味を見出すシーンが特に響きました。“家族に反対され、不安定な選択かもしれない。それでも、それがやりたいから、挑戦してみたい。死んでしまってから気づくのではなく、今世で生きがいを全うしよう。” 私も異国の地で、俳優という不安定な職業の道を歩んでいるなかで、一歩ずつ夢が叶い、キャリアが転じ始めたタイミングで本作を観たので、夢や情熱、どうやって人生を生きていくか、についてあらためて考えさせられました。

そして、いま思うのは、私にとって夢そのものや夢を叶えることは、私の人生の大切な軸でもありながら、それだけが崇高なわけではない、ということ。自分の夢を叶える道のりにある苦しみ、葛藤やすべての過程が、人生の大事な一部なんですよね。そして、いま目の前にある日常や、人や家族との絆、人生に向ける情熱そのものが、とても愛おしいものなんです」

『ミリオンダラー・ベイビー』

女子ボクサー、マギー(ヒラリー・スワンク)は、孤独で年老いたトレーナー、フランキー(クリント・イーストウッド)に弟子入りする。心を通わせ、二人三脚でタイトルマッチに挑んだ2人を悲劇が襲う。イーストウッド監督が父娘のような愛と絆を切なく描き、アカデミー賞作品賞など主要4部門を制した、2004年公開の感動作。

『レ・ミゼラブル』

ヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作に、世界各地でロングラン上映されてきた同名ミュージカルを、トム・フーパー監督が映画化した作品。圧倒的な歌唱と演技、また劇中で自身の長い髪を実際に切るなどしてファンテーヌ役を演じたアン・ハサウェイがゴールデングローブ賞、アカデミー賞で助演女優賞を獲得した。2012年公開。

『ソウルフル・ワールド』

ジャズ・ミュージシャンを夢見る音楽教師ジョーは、夢が叶う直前にマンホールに落下し、魂たちが地上に生まれる前に「どんな自分になるか」を決める世界に迷い込む。大冒険の末に見つけた、その人なりの人生の美しさときらめきとは。アカデミー賞で長編アニメーション賞と作曲賞を受賞した、2020年公開のピクサー製作映画。



取材・文/八木橋 恵

飯田

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