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Wellness

50年、100年先の未来に向けて。神山杉に新しい価値を生み出した「SHIZQ」

#My Muse Selection

本質的なウェルネスを目指す人に送る「My Muse Selection」。最終回を飾るのは、徳島県の神山を拠点に活動する「SHIZQ(しずく)」。山や川を守るために「木を使う」というコンセプトのもと、器やアロマを製作・販売しています。
「質がいいもの」の奥に潜むリレーションシップ(関連性やつながり)に目を向けることで、50年後の私たちの未来に繋げていきましょう。

2025.08.02公開

教えてくれたのは・・・
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統括責任者・渡邉朋美さん

神山杉に想いの“しずく”をのせて

Q1.『SHIZQ』のコンセプトを教えてください。

A.「未来の子どもたちに少しでも多くの“しずく”を残せるように」と、徳島県神山町を拠点に、地域の環境改善と持続可能な社会づくりを目指す活動をしています。その一環として、地域材である神山杉を活用したカップやお椀、アロマの開発製造・販売を行い、「SHIZQ(しずく)」ブランドとして展開しています。

Q2.ブランドを立ち上げたきっかけは?

A. きっかけは2012年、サテライトオフィスの開設にともない、大阪から神山町へ移住したひとりのデザイナーの気づきから始まりました。緑豊かな自然に囲まれた山里だと思っていた神山の風景のほとんどが、実は人の手によって植えられた人工林であり、水源すら危うい状況にあることを知ったのです。

戦後、建築材として大量に植えられたスギやヒノキは、国の政策転換により使われないまま放置されました。適切な管理がなされないことで、花粉症などの健康被害や土砂災害が増え、「緑の砂漠」とも呼ばれる状態に。神山町では、地域の水源である川の水量が40年前と比べて3分の1にまで減少しています。

こうした問題は、森林の約4割が人工林である日本だからこその構造的な課題ですが、当時はまだ広く知られていませんでした。私たちはまず、この現状を多くの人に知ってもらうこと、そして「木を使う」ことで環境と経済の循環を生み出し、「デザインを使って」継続することで未来へとつなげていこうと、2013年にSHIZQブランドを立ち上げました。

Q3.ブランドを通して、世の中に伝えていきたいことは?

A. SHIZQでは、杉の「軽さ・口当たり・肌触り」といった素材の特性を活かした木製品をはじめ、幹から抽出したリラックス成分による「睡眠用エッセンシャルオイル」、枝葉から抽出したリフレッシュ成分による「集中用エッセンシャルオイル」など、自然の恵みを五感で感じられる商品づくりを行っています。

私たちが目指しているのは、こうした製品をきっかけに、人々が自然に意識を向ける入り口をつくることです。ただ「いい香り」「使い心地がいい」で終わるのではなく、その奥にある、今まさに脅かされつつある自然の現状や背景にも目を向けていただきたいと願っています。

SHIZQが大切にしているのは、「内的自然」を取り戻すことです。「内的自然」とは、自然に対する倫理観や道徳心であり、自然と実際にふれあうなかでしか育まれない感覚です。現代のさまざまな環境問題の根本には、便利さと引き換えに自然から切り離された暮らしのなかで、この内的自然が失われてしまったことがあると私たちは考えています。

たとえ小さなきっかけでも、カップやアロマを手に取ることで、自然へのまなざしや暮らしへの問いが生まれ、私たちが目指す「本当の豊かさ」に共感してくださる方がひとりでも増えていくことを願っています。SHIZQはそのためのメッセージを、さまざまな方法で伝え続けたいと思っています。

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(右)SHIZQ 鶴 タンブラー 15,400円、(左)SHIZQ 亀 タンブラー 20,900円
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SLEEPING FOREST エッセンシャルオイル&ディフューザー ギフトセット 5,500円

Q4.プロダクト制作でこだわっていることは?

A. しずくブランドは、杉が持つ固有の特性を、デザインという手法で新たな価値へと昇華させています。効率や生産性を優先する方法では生み出せない、本質的で意味のあるものづくりを大切にしています。

満を持して発売した【堤淺吉漆店×SHIZQ】亀八 NUKADOKOは、杉の通気性・調湿性と、天然漆の抗菌性・防水性に着目し、SHIZQならではの美しいデザインと、京都の老舗・堤淺吉漆店の確かな技術を融合させた、究極のぬか漬け用の器として誕生しました。
杉や漆といった素材の機能性を活かすだけでなく、ぬかに触れ、四季折々の野菜を漬けるという習慣や、自分や大切な人の健康を思いやる気持ちを、かたちにしています。キッチンに佇む愛らしいフォルムには、日本人の食文化を支え、育む願いも込められています。

Q5.大変だと思うことは?

A.SHIZQの木製品は、年輪の美しい重なりを生かした木目模様が特徴です。この表情を引き出すために、伐採から製材、乾燥に至るまで独自の工程を採用し、一つの製品が完成するまでに2年以上の歳月を要します。特にNUKADOKOは、その大きさゆえに材料の確保が難しく、数量限定で販売しています。また、杉は軽量な反面、漆を非常によく吸い込むため多くの漆を必要とし、非常に贅沢な仕様になります。SHIZQブランドの立ち上げ当初には、「そんな非常識なことを…」という声もありました。

しかし、完成した製品には漆の深みある色味と、年輪が浮き立つようなモダンな美しさが現れ、他の木材では表現できない魅力を備えています。実際に仕上がりを見た職人からも「自分用に欲しい」と言っていただけるほどの品質になりました。

そもそも、杉を使って継ぎ目のない器を作るという試みは、平安時代から続く木工ろくろの伝統を塗り替える、前例のない挑戦でもありました。存在しなかったものを形にし、その価値を理解してもらうまでには多くの困難がありましたが、今では唯一無二のブランドとして、国内外で認められつつあることに、手応えと誇りを感じています。

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【堤淺吉漆店×SHIZQ】亀八 NUKADOKO 110,000円 ※数量限定のため、在庫は残りわずかとなります。

Q6.ブランドがこの先目指すことは?

A.ブランド10周年を機に新たな取組みとして、生活水が減少した古民家とその周辺の耕作放棄地や裏山という典型的な里山フィールドを舞台に「水源寛容力を育む環境改善ワークショップ」を開始しました。すでに4回開催し、延べ250名の方が伝統的な手法による里山の手入れを学び実践しています。

SHIZQは、木の香りや手ざわり、ぬくもりといった五感を通して、自然と人とのつながりを感じていただけるプロダクトづくりを大切にしています。

そうした「感じる体験」は、自然への共感を育み、「守りたい」「関わりたい」という気持ちにつながります。

この感性の芽を、実際の森づくりや水源涵養力の回復へと結びつけるのが、私たちが取り組む環境改善ワークショップです。

感性にふれる(SHIZQの製品) → 共感が生まれる → 体験する(山や水を守るワークショップ)→日常行動に変化が生まれる、という循環。

プロダクトとワークショップ、それぞれのアプローチを通して行動変容を促し、自然と共にある豊かな未来を、皆さんと共につくっていきたいと考えています。

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神山にて、自然の豊かさや循環を知るための環境改善ワークショップもたびたび開催

Q7.神山の魅力とは?

A.トンネルを抜けて神山町に入ると、「空気が変わった」と感じる方が多くいらっしゃいます。山に囲まれた清浄な空気、青石の緑を映す清流。神山という地名通り、目に見えないけれど特別な空気感が存在しています。私たち自身も、この土地に流れる見えない気のようなものを日々感じながら活動しています。

日本人にとって古来より神聖な存在とされてきた杉に抱かれるように暮らす町の人々は、自然とのつながりを大切にし、季節に寄り添う知恵や手仕事を今も日常の中に受け継いでいます。その姿勢や暮らしぶりは、私たちにとって大きな学びであり、憧れでもあります。

すだちの生産量日本一を誇り、四国八十八ヶ所のお遍路文化が息づく神山は、人口減少という課題を抱えつつも、アートプロジェクトの展開やテレワークの先駆的導入、近年では高等専門学校の開校など、新たな挑戦を柔軟に受け入れてきたユニークさが魅力だと感じています。

SHIZQ公式HP



杉の器を手に持った瞬間の心地よさ、アロマを嗅いだ瞬間の心が解ける感覚は、それだけで私たちを癒してくれます。 自然のもつ豊かさは、私たちに幸せを運んでくれる。 そんなことをふと、思い出させてくれます。環境保全や改善を義務と感じるのではなく、地球は私たちの一部だということを肌で感じるだけで、希望が持てる未来へと繋がっていくのではないでしょうか。

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50年、100年先の未来に向けて。神山杉に新しい価値を生み出した「SHIZQ」

本質的なウェルネスを目指す人に送る「My Muse Selection」。最終回を飾るのは、徳島県の神山を拠点に活動する「SHIZQ(しずく)」。山や川を守るために「木を使う」というコンセプトのもと、器やアロマを製作・販売しています。 「質がいいもの」の奥に潜むリレーションシップ(関連性やつながり)に目を向けることで、50年後の私たちの未来に繋げていきましょう。

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