Culture
「私のバイブル」 vol.7/シンガーソングライター・AISHAさん
自身が持つ才能を活かし、クリエイティブな生き方をしている素敵な人に、ミューズたちの指針や道標となり、My Museの在り方を体現するような映画や本、アートをご推薦いただく「私のバイブル」。
2025.04.21公開
第7回には、日本とアメリカなど世界中をステージに、シンガーソングライターとして活動するAISHA(アイシャ)さんにご登場いただきます。ミス・サンシャインと謳う笑顔や大きな愛で包み込むようなボイスを届けるAISHAさんの感性を刺激した作品とは? 歌手や俳優をはじめ、アートに携わる人たちへのリスペクトが止まないというAISHAさんから聞いた、最高のエンターテインメントに触れる興奮を与えてくれる、3つの作品をご紹介します。
「これから紹介する3作品の共通点は、これまでの考えがひっくり返るような衝撃を与えてくれて、とにかくエンターテインメントとして優れているところです。いずれの作品も、幾度も観ているのですが、一度見ただけでは理解できなかったり、以前理解したことがまったく違って見えたりするので、飽きさせないんですよね。
アートが大好きな私は、映画のみならずいろいろな作品にふれていますが、なかでも、とびきりのアーティストである俳優のトム・クルーズが大好きなんです。『ミッション・インポッシブル』シリーズなど、いつも本当に予想を超えるクレイジーなものを魅せてくれますし、脳が爆発しちゃうような刺激を、演技をとおして提供してくれますよね。特にこの作品は、動いているのをみているだけで目からハートが飛び出すほど魅力的なペネロペ・クルスやキャメロン・ディアスといった、私にとって憧れの俳優たちが出演しているので、すぐにこの作品の虜になりました。
“何が現実なの⁉”と、終始ドキドキさせてくれるサイコスリラーなのですが、品性のある、美しい才能たちが繰り出す演技やアクションなどに目がひと時も離せません。絶対に、流し見はできない映画です!
特にこの作品は、パーフェクトの意義を私に説いてくれました。トムが演じる主人公は、彼にとって願望どおりの女性、完璧であるはずの美貌や富、人生などを手に入れた人物なのですが、とある出来事を通して、自分にとっての本当の幸せとは? 愛や友情とは? 理想の恋人や人間関係とは?と、“本来の自分”を取り戻していくんです。自分で自分に押し付けているような“こうあるべき”といった、凝り固まった完璧への定義を手放し、そのままの自分を思い出すとき、本当の意味で“今を大切にできる”のではないかと。人生に起こることへの対処もわかってくる。そして、等しく、そのままの他人を受け入れること。これまでにしがみついたものよりも、“これでいいんだ”と、今この瞬間を大切にする寛容さと肝要さを教えてくれた作品です」
「同作も同じく、とんでもない衝撃があり、そして本作のテーマのとおり、“今”や“時”について新たな示唆を与えてくれた作品です。監督がストーリーに込めたメッセージや編集技術が斬新で、映画の時系列が違う(別編集)バージョンを含めて何度も何度もこの作品を観ているのですが、そのたびに新しい発見があるんですよね。何年たって見ても、感性が刺激される興味深い作品を世に残せるってすごいことだと思います。
こちらの作品も、一瞬でも目を離すと、パズルが解けなくなるし、あっという間に置いていかれてしまうので集中力を要する作品なのですが、その集中力や止まないドキドキが、とっても心地よいんです。主人公は、記憶を記録するために体にタトゥーを彫っていくのですが、いかに、自分の記憶というものが危うくて曖昧なものであるかを考えさせられます。自分はこう感じたし、こう記憶しているが、それは“本当”なのか? あれは“現実”なのか。トラウマという言葉で表現されるような“不幸”や“恐怖”も、自分がそう信じ込んでいるだけで、自分がそれらに対する捉え方や角度を変えたら、まったく違うものにみえてくるかもしれない。自分が勝手に頭の中で作り出しただけの可能性だってある。自分が被害者である意識を取り除いたら、加害者だと思った人や自分を取り巻く人間のしたことが、“この人にもこの人なりの事情があったのかも”と。
私の、アーティストとしての作品づくりの特徴は、自分の実体験や出会った人との言葉などを、そのままストレートに表現しているところにあると思うんです。インスピレーションはいつも現実にあるし、“実際の気持ち”を歌っている。だから、そのリアルが共感や理解につながるんだと感じています。あまりそのことを、自分がいかに映画などエンターテインメントを好きでいたり、芸術を楽しんだりする理由としてあらためてつなげて考えたことはなかったけれど、人生の事象について、映画から理にかなう説明をもらっているところはあるかもしれないです。“なるほど、こういう考え方ができるのか!”など。私が歌で表現しようとしていることは、監督や映画を製作する人たちがしていることに重なるのかもしれない。映画のとあるワンシーンから、“あれ、あの子が言おうとしていたことって、このことだったんじゃないのかな⁉”とか思うことも少なくないんです。私のリアルライフに起きる事項についての意義を理解するのに役立っていて、みんなどこかで同じ人間なんだ!と。主題歌を歌うことになった映画など、そういった気づきのために、その作品に出合ったのではないか、とまで感じることもあります」
「人生の意義について、といえば、イギリスの作家・ダグラス・アダムスが書いたSFシリーズが原作のこの作品もご紹介したいです。本やTVシリーズもありますが、私が見たのは映画版です。もともとブリティッシュのコメディは大好きなのですが、あまりSFは得意ではなく。リアリティを追究するのが好きだから、SFは好みや興味の対象ではなかったのですが、好きな俳優やラッパーが出演しているので見てみたら、夢中になりました! 一体どうやってこんな作品が思いついたの? どうやって創られたの? と大興奮しました。作品が伝えようとしていることもそうですが、偏見はよくないですね。エイリアンだからSF、とか、答えはひとつじゃないです。
何もうまくいかない日だけど、地球が滅びるから関係ないというような驚異的な始まり方をします。作品自体が、“生きる意味を探しに行く”ということを描いているのですが、意味を追い求める旅路とスーパーコンピューターとのやり取りにおいて、その解答を追求するとき、質問の仕方を変えたら、その答えもまた違うものになるという究極的な課題を提起しています。“人が、万物が生きる意味、それは42”って言われて、意味わからない!ってなるけれど、人生ってそもそもランダムで、求めているような応えじゃないだけで、特に意味付けはないかもしれないじゃないですか。冒険にしても、探検にしても、人生のさまざまな場面や角度によっては、その意味って変わるかもしれないし。
本作も難しいことを考えずに、次にどんな展開が待っているのか、ローラーコースターのように刺激的で、物語から注意をそらすことができない作品としてシンプルに楽しめますよ。何度も見ているけれど、早くまた観たい。映画って本当に楽しくて大好き!」
美貌や富、すべてを手に入れた出版界の若き実力者、デヴィッド(トム・クルーズ)。完璧な毎日を過ごすが、ある日運命の女性ソフィア(ペネロペ・クルス)と出会ってしまい、その瞬間から彼の運命は思いもよらない方向へ転がり始める。本作で恋人同士を演じ、実生活でもカップルになったほど魅力的な2人の姿も必見。
妻を殺されたショックから、10分間しか記憶を保てない記憶障害をもつ主人公が、犯人を捜すアメリカのサスペンス映画。物語は終わりから始まりを映しだす形式をとっており、理解ができない観客は、その記憶障害を追体験する。革新的な内容が話題となり、興行も大成功となった。監督・脚本は、クリストファー・ノーラン。
とある宇宙人が「生命と宇宙、そして万物についての疑問」に関する答えを導き出すために、スーパーコンピューターを作る。750万年かけて出た答えは理解不能。答えは“地球”にあるかもしれないが、ある日宇宙船団が飛来し、銀河ハイウェイ建設工事のため、と言って地球を破壊してしまう。失われた究極の問いと答えとは。
取材・文/八木橋恵
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