Wellness
「忙しい」が口癖と思ったら。「脳」を休めるマインドフルネス瞑想
毎日の生活で「忙しい」とつい口にしていると思ったら、世界中で注目を集めているマインドフルネスがおすすめ。なぜ今、必要とされるのか?マインドフルネスの歴史やルーツを紹介するとともに、誰でもかんたんにできるマインドフルネスのやり方について、禅僧であり医師の川野泰周先生にお聞きしました。
2021.12.27公開
シリコンバレーのIT企業をはじめ、近年マインドフルネスを取り入れる企業が世界中で増えています。
“マインドフルネス”という言葉が一人歩きして「心を無にすることが…」と思われる方もいます。そもそもマインドフルネスとは、“今、この瞬間”をどういう姿勢で過ごすのか、そこで感じられた物事に対して良し悪しを判断せず、あるがままに受け入れる心のあり方を意味します。
特定の瞑想法のことを指しているわけではなく、あくまでも「生き方のスタンス」を示している言葉です。
川野先生の話によると、ヨガや太極拳はもちろん、散歩、食事、あらゆる行動に対して意識を向けられていれば、立派なマインドフルネスといえるとのこと。情報過多になりがちな社会の中で脳の働きすぎを抑える効果が期待できるマインドフルネスは、医学的な面から見てもマルチタスクを抱えがちな現代人におすすめの方法として推奨されています。
自分でマインドフルネスができれば、憂鬱やストレス、心の疲れで診療所に行く必要もなくなるかもしれません。こうした背景から、世界中で注目されているのです。
「マインドフルネス」という言葉が盛んに用いられるようになった30〜40年前。
人間が今この瞬間「感じる」という行いに対して取り入れていくことを総称した言葉として認知されていますが、そのルーツは仏教です。約2500年前に修行を始めたブッダが生老病死の苦しみを乗り越えるために瞑想を始めたとされますが、現代ではマサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジンが、ストレスや悩み・痛み・病気に対応する手助けとしてマインドフルネス瞑想を取り入れた治療法を提唱しています。
スピリチュアルや精神論ではなく、MRIの最新技術などにより、瞑想の習慣が脳の機能や形態を変化させ得ることが科学的に示されたことによって、個人レベルで取り入れる方が増えているというわけです。
マインドフルネスを実践して効果が現れると、「アウェアネス」と呼ばれる細やかな感覚に気づく能力が養われます。美しい桜が散る、タンポポの綿毛が舞う、季節の野菜の味がおいしい、風が気持ちいいなど、ちょっとした日常の変化に気づきやすくなります。そんなマインドフルネスについて、川野先生が語ってくれました。
「マインドフルネスは、ありのままの感性や感覚を受け入れることが大切。私たちは、世の中を飛び交うあまりにも多くの情報に翻弄され、他者の価値観で善悪を判断してしまいがちです。ある食べ物が健康に良いとメディアで紹介されると、すぐに購買行動を起こしたりするのが良い例です。こうした判断には、自らのリアルな感覚や繊細な感性がともなっていないため、外から入ってくる情報や他の人の意見に翻弄され続けて、心も疲れてしまうのです。」
「世の中の価値観だけに左右されるのではなく、自らのあらゆる言動において自分自身が主人公であること。そして自分の心を大切にする生き方を選択していただきたいのです。そのためには、自らを客観的に観察する力を育むことが大切で、そのカギとなるのがマインドフルネスの習慣なのです。」
ただ注意してほしいのは、マインドフルネスは「なんでもOKにしてしまう態度」とは根本的に異なるということ。この人と話すと疲れる、この価値観に対して自分は心地よく感じていない……マイナスの感情や思考もしっかりと認識し、そういった感覚を持ったという自分自身をも受け入れることが肝要です。
こうした「自己受容」ができることで、他者に承認してもらわないと安心できない依存的な心理を手放すことができると川野先生。インターネットの情報に影響されやすい今の時代だからこそ、安定した自我(=心幹)が必要とされているようです。
全ての行動に自分の意識を集中してみようといっても、感覚として分からないと腑に落ちないのがマインドフルネス。ここでは仏教の坐禅の導入で用いられる呼吸「数息観(すうそくかん)」を取り入れた瞑想のやり方をまとめてみました。
初心者さんなら胸が広がって空気を取り込みやすい、坐禅の姿勢(座った状態)がおすすめ。慣れてきたら仰向けで寝ながら、あるいは立ちながらなど、いろいろな場面で応用できるようになるでしょう。
目を瞑り、鼻から吸って鼻からゆっくりと細く長く吐きます。この時、吐きながら、「ひとーつ」とゆっくり心の中で言ってみましょう。全て吐ききったら、自然に息を吸い込み、再び吐きながら「ふたーつ」と言います。こうして3つ、4つ、5つ…と息を吐くたびに数を数えていき、「10(とぉー)」までいったら、また「ひとーつ」に戻り、1から10までの数字を延々と心の中で唱え続けるのです。数字という言葉に意識を集中しながらまずは数分間を目安にやってみましょう。
鼻呼吸が難しい方は、口で呼吸してもOKです。
瞑想をやっている間に眠くなってきた場合、修行僧なら警策(けいさく)という木の板で肩を叩いてもらい、目を醒まさせてもらいます。でも皆さんが日ごろ取り組む際は、「これは体が睡眠を必要としているサインなんだ」と思っていただいてもよいでしょう。その日はそこで瞑想を終えて、眠りにつくことが心身を労わることにつながると思います。
ぜひ、自分にご褒美を与えるような感覚で数息観の呼吸法を実践してみてください。これが「心地良くなる体験」と認識していただくことが大事です。
最近では、自宅でかんたんにマインドフルネスや瞑想が実践できるアプリも次々に登場しています。
今回、取材で教えていただいた川野泰周先生の数息観は、瞑想・マインドフルネスアプリ「Relook(リルック)」で公開されているもの。川野先生の声によるガイダンスで初心者でも簡単に実践できる、ネガティブ感情を緩和する瞑想や感情をリセットする瞑想など、心と体の休め方をテーマにしたプログラムが配信されています。
気になる方は、瞑想アプリで検索すると、いろいろなアプリが出てきますよ。1日は24時間。その中の1分間だけマインドフルネスの時間にして、日々のくらしに取り入れてみてはいかがでしょうか。
【取材協力】川野泰周https://thkawano.website/瞑想・マインドフルネスアプリ「Relook(リルック)」(ダウンロード無料)https://media.relook.jp/relook-app/
ライフスタイルライター|日本化粧品検定1級|TCカラーセラピスト|旅、美容、グルメ、おしゃれ、働くアラフォーの心に響いたリアルライフを執筆
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