Interview
「子どもとの時間は、人生そのもの」母になってもブレなかった福田萌子さんの在り方とは
2020年に配信された『バチェロレッテ・ジャパン(Prime Video)』に初代バチェロレッテとして参加し話題となった福田萌子さん。番組内では、自分の意見をハッキリ相手に伝え、誰に対しても真摯に向き合う姿が印象的でした。そして福田さんは2023年に第一子誕生を報告。母となった今、生活や心境に変化はあったのでしょうか。
2024.10.26公開
福田萌子(以下福田):もちろん、ライフスタイルはガラリと変わりました。育児を優先する生活になったので、物理的にそれまでの生活とは変わるのは必然ですよね。でも、それで
「自分の時間がなくなった」という感覚はないんです。
たとえば歯磨きひとつとっても2倍の時間がかかりますが、私の歯磨きの時間も子どもの歯磨きの時間も、私が選んで過ごしている時間という認識なんです。
福田:子どもを産んだことは、自分が望んだことなので子どものために何かをすることは、「私の時間」だと捉えています。だからストレスにはならないですね。
福田:もちろん、子育てをはじめたばかりの頃は要領がつかめない、ということはたくさんありました。出産って、いきなり人間がひとり出てくるわけじゃないですか。人生そのものがガラリと変わるのはあたりまえだし、想定外のこともたくさんあります。どれだけ子どもが生まれる前に準備していても、準備が十分、なんてことはありえなくて、やりながら学んでいくしかない。子どもによって性格も性質も違うわけですから。「これくらいはしても大丈夫なんだな」とか、「ここでこうやって寝ているぶんには安全なんだな」といったふうに少しずつ要領がわかっていって、それからちょっとしたゆとりや余白ができてくるような感じです。
福田:そもそも仕事って、人によって概念が違いますよね。生活をするため、お金を稼ぐため、好きなことをするため……いろんな概念があると思っています。
それでいうと、今の私の仕事は、「この子を毎日安全に、健康に笑って成長させること」なんです。一般的な働く、という意味合いではなくなってしまうかもしれませんが、仕事を役割として考えるなら、私の今の役割は保育をすることが最優先。贅沢な話だと思いますが、そのあとの余力でいわゆる一般的な金銭をいただいて働く、ということができたらいいな、と思っています。
というのも、私の仕事は特殊で、産休や育休など保証のある休みがいただけないからこそ、休むことをせず、子どもが小さなうちは自分で優先順位を決めて仕事量を調整しています。
あと、子育てをしていて気付いたのは、私の仕事って楽だったんだなぁということ。
福田:命あるものを育てているわけですから。こんなに大変で気の抜けない、責任重大なお仕事なんてこの世にあるのだろうか、と思います。
福田:そうですね。簡単に言えることではないですが、体も心もヘルシーでいられるような子育てができれば、世の中はもっと平和になるのに、とは思います。
福田:自分の体をチェックするのを習慣にしています。朝起きたら必ず白湯を飲んでいるのですが、そのとき「喉がつまる感じがするなぁ」とか、「体が少し冷えているのかな」など自分の体に意識を向けて、そのときの状態を感じるようにしています。
子どもを抱っこしていても、「肩のあたりが動かしづらいな」と思ったらストレッチしたり、日々起きた瞬間からチェックしているかもしれません。
福田:朝起きたら白湯を飲むという習慣は、もう何年も続けていることです。沸騰させて50度くらいまで冷ましたものを飲んでいます。時間のない時や旅先ではお水で割ったお湯を飲むこともありますが、以前ホテルに宿泊していてどうしてもあたたかいものが飲めなかったときがあって、仕方なく普通の水を飲んだら体が冷えてしまって、その日は一日ずっと調子が悪くて。
白湯を飲んで喉もと付近が詰まっていたりしたら、呼吸が浅くなっている証拠。呼吸が浅くなるのは忙しくて肩に力が入ってしまっているときがほとんどだから、もう少し時間にゆとりを持つようにしようとか、自分の状態に気づくきっかけになるんです。
福田:私もびっくりした一言です(笑)。12歳の頃からモデルとして活動していて、事務所の社長やまわりの大人たちに「あなたはハングリー精神がなさすぎる!」と言われ続けて、自分に自信がなくなっていたんです。一生懸命やっているつもりなのに、まわりにはそう見えていない。頑張っても頑張っても「ハングリー精神って何?」「なんで私は頑張れないの?」とずっと考えていたんです。
努力しているつもりでもなかなか認められないことにどうすればいいのかわからなくなり、ある日父親に、ボロボロ泣きながら相談したことがあったんです。「私はダメな人間なの」と。そのとき「自分のどういうところがダメだと思っているの?」と聞かれて、「こういうところもダメだし、こういうところもダメだし…」と思いつくままに答えていて、「ハングリー精神もないし」とぽろっと言ったところ、「何言ってるの?」と笑われて。
「萌子ちゃんは、ハングリー精神がなくてあたりまえ。僕たちはあなたをそういうふうに育てたつもりはありません。あなたにはハングリー精神がないし、これからもありません!」と言われたんです。
「え〜!? (ハングリー精神)ないの!?」と思って驚いたと同時に、父の言葉にハッとさせられました。そもそもハングリーな環境で生きてきてないのだから、ハングリー精神を持とうという発想自体が、的外れだったのです。ハングリー精神がない私が、等身大の福田萌子なのだ、と。
福田:そうですね。それを言われるまでは、「ハングリー精神はなくてはならない」と思い込んで必死に頑張っていたけれど、どこか肩の力が抜けたというか、腑に落ちたような感覚がありました。
福田:たしかに、モデルになりたての頃は、オーディションでも「こういうふうにしたほうがいい」と教えられたことをそのままやっていました。でも、いつの間にか自分のなかで違和感が大きくなり、「自分は自分らしくいたい」という気持ちが強くなっていきました。
たとえばパートナーシップでも、「こういうほうがモテるらしい」とまわりが言ったことをそのまま真似して相手に好かれたとしても、ずっと偽った自分で生きていくのは苦しいなと思ってしまいます。もちろん、そのほうが心地いい方もいらっしゃるとは思いますが、私は人にも自分にも嘘をつきたくないタイプなので、ありのままの自分でいて、それで好きだと言ってくれる人と一緒にいたほうが幸せなんじゃないかな、という考え方です。
福田:「自己陶酔」と「自己肯定」の違いですよね。
「自己肯定」は、私の今のありのままを大きくも小さくも見せてないし、自分を理解して認識し、まわりにも嘘をついていない状況。自分は自分で大丈夫と肯定している、ということ。
それが「自己陶酔」になると、「自分は最高だ!」と思っていて、自分は100点満点だから何も変わる必要がないし、これが私だから!と、ある意味押し付けている感じもします。
たとえば、「何か自分が発した言葉で誰かが傷ついたかもしれない」という場面で、「いや、でもこれが私の性格だから」で片付けてしまっては、何も変わらないし思考が停止してしまう。それはただ自分に酔っているだけなんじゃないかな。
「自己肯定」とは、改善していこうとする自分も存在している気がします。誰かを傷つけてしまったならば、そんなつもりで発言していなかったとしても、「そういうふうに捉える人もいるんだ」と、次から気をつけるようになる。ありのままの自分を認めて、そのことにひどく落ち込むとかでもなく、「私がこういう言い方をすることで傷つく人もいるんだな」と認めることが大切なのだと思います。
福田:先のことはまったく決めていないですね。でも、趣味のスポーツの話でいうと、アイアンマンレース完走、です! アイアンマンとは世界最大規模のロングディスタンスのトライアスロンのレースで、スイム3.8km、バイク(自転車)180km、ラン42.195km。ハーフは完走したことあるのですが、フルは一度も挑戦したことがないので……。人生で一度は完走してみたい。
福田:産後すぐは体力が落ちてしまっていたのですが、徐々にトレーニングを重ねていって、いまでは「明日フルマラソン走って」と言われればおそらく走れます(笑)。子どもを産む前はスイムやバイクもよく練習していましたが、いまはその時間がとれないので、走ったりストレッチをするくらいしか、できないんですけど。
福田:はい! フルのアイアンマンは体にいいことではなさそうですけど(笑)、いつか必ず、挑戦したいことですね。
「子育てと仕事の両立」をめぐる論争や議題はあらゆるメディアやビジネスシーンで目にするけれども、そもそも「子育てをする自分」は自分であって、それを軸にライフスタイルを決めればいい。あたりまえのことなのに、ハッとさせられました。
今までできていたことが「できなくなった」という視点で物事を見てしまうと、マイナスに捉えてしまうのでしょう。
あくまで「自分で選択したこと」という認識があることが、大切です。
物事を俯瞰で見て、善・悪なくジャッジのない世界で生きている福田さんの言葉が、胸に刺さりました。アイアンマンに挑戦するママの姿がさぞかし美しいのだろうと、すでに心弾みます。
福田萌子
Moeko Fukuda
沖縄県出身のモデル、スポーツトラベラー。スポーツの素晴らしさや、従来の固定観念にこだわらない女性の在り方を世界中に発信している。Prime Videoで配信された恋愛リアリティ番組 『バチェロレッテ・ジャパン』では初代バチェロレッテとして日本中で話題に。2023年1月、第一子誕生を報告。著書に『「なりたい自分」になるシンプルなルール』(幻冬社刊)がある。
福田萌子さん、初の育児本『子どもがわたしに教えてくれること』が発売決定!
本書では、妊娠~出産の経験、そして今現在の育児の経験を綴っています。 「妊婦は生ものやコーヒーはNG?運動もダメ?」初めての妊娠中にどのように自身の身体と向き合っていたか、ランニングシューズを持参して臨んだ出産時のエピソード、産後ケア施設を利用して“本当 によかった”と感じた経験などを具体的に掲載。また、シングルマザーという道を選んだ経緯や、育児を通して感じた彼女自身の新たな発見を掲載。
後半では、福田さんが実際に行っている育児を『睡眠(ねんトレ)』『食事』『知育、遊び』に分けて掲載。「睡眠と食事にはこだわりがある」と本人が語るように、福田さんの子育てにおいて欠かせないトピックスになっています。 コラム部分は、子どもが生まれる前に準備したもの(ベビーカー、おくるみ、肌着、寝具など)、おもちゃや絵本、お出かけグッズといった福田さんが実際に愛用する育児グッズを掲載。また、福田さんのSNSでも話題の離乳食レシピを8Pにわたり掲載しています。
「子育てはとてもクリエイティブで楽しい」「子どもと日常の冒険に出ている気分」と語る福田萌子 さんの子育て。読めばきっと、心が温かくなるはず!
2024年12月6日(金)に主婦と生活社より発売予定です。
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