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フェアトレードはメリットだけじゃない。知っておきたい現状の問題点を解説
フェアトレードには、問題点もあるって本当?公平を重視する取り組みとして知られているフェアトレードの、現状における問題点をご解説。メリットと併せて比較して、原因や解決策を探っていきましょう。今後の課題を考えるための、参考になれば幸いです。
2021.04.24公開
フェアトレードを推進することで得られるメリットとして、開発途上国での貧困の削減が挙げられます。フェアトレードの対象となっている主な商品には、コーヒーやカカオ、綿花や紅茶などが見られます。いずれも途上国で生産されることが多い商品ですね。
しかし、価格を安く抑えるために、正当な対価が支払われない傾向にあります。コーヒーを例にした場合、労働者の平均的な日給が1~2ドルというケースも。フェアトレードコーヒーにすることによって、正当な対価が得られれば、貧困の削減に繋がります。
フェアトレードのメリットには、労働環境の改善も含まれます。コーヒーやカカオ農園などの仕事は出来高制であることから、生産性を上げるために、劣悪な労働環境に身を置く労働者が多いのが現状です。
例えば、長時間労働や危険な作業、農薬における健康被害といった例が見られます。フェアトレードの推進は、労働環境を改善するための解決策にもなると考えられています。
フェアトレードには、児童労働の防止というメリットも。児童労働の最も大きな原因は、経済的な貧困だと言われています。コーヒーやカカオ農園などで働く児童の数は、決して少なくないのが現状です。なかには、強制的に働かされるというケースも。
フェアトレードビジネスで適正な価格での取引が行われることは、貧困の削減に繋がり、ひいては児童労働の防止にもなります。また、労働時間が減少することで、子どもたちが教育を受ける機会も増えると考えられています。
環境保護も、フェアトレードによるメリットの一つです。発展途上国や貧困地域では、生産性を上げるために大量の農薬や、環境に影響を与える薬品を使用するケースが。
また、過剰な森林伐採や、絶滅危惧の動植物の捕獲が行われることもあります。フェアトレードが推進されれば、無理に生産性を高める必要がなくなるため、環境保護に繋がると言われています。
Point
フェアトレードとは、「公平な貿易」を意味する言葉。開発途上国で生産される原料や製品を、適正な価格で継続的に取引することにより、立場の弱い生産者や労働者の生活向上を支えることと目指しています。認定されるには、労働環境の改善や農薬・薬品の使用削減といった厳しい基準をクリアしなければいけません。
以下の記事では、Bean to Barと呼ばれるチョコレートについて解説しています。フェアトレードの取り組みが行われている製品も多く、注目を集めています。人気商品のご紹介もしておりますので、気になる方は是非チェックしてみてくださいね。
多くのメリットをもたらし、貧困問題の解決策となると考えられているフェアトレードですが、問題点も残っています。分かりやすくまとめてみたので、フェアトレードをさらに良いものにするために、現状や原因をチェックしていきましょう。
フェアトレードの認証には、基準が曖昧なものがあります。認証の種類は、大きく3つに分かれます。製品に対する認証となる『国際フェアトレード認証ラベル』、団体に対するフェアトレード認定を行う『フェアトレード団体マーク』、企業や団体が独自に基準を設定する『その他』のマークです。
とくに注意したいのが、独自基準を設けている『その他』のマークのもの。明確な基準が分かりづらく、実績が不明確なことがあります。フェアトレードの基準は、企業や団体ごとに設定しても良いとされていることが原因です。そのため、『その他』のマークが使用されるケースが増えるというデメリットが。
課題をクリアするための解決策としては、完全に中立・公正な監査機関の存在の必要性が挙げられます。企業や団体の活動を把握し、本当に基準を満たしているのかを調べる機関が求められているのです。また、消費者も企業独自の取り組みを見定めて、本当のフェアトレードなのか判断することが求められます。
フェアトレード認証の問題点には、認知度が低いというものも挙げられます。2019年に行われた意識行動調査によると、日本でのフェアトレードの認知度は32.8%。少しずつ上昇してきつつありますが、まだまだ低いのが現状です。
フェアトレード認証が存在していても、認識されていなければ、貧困問題への解決策にはなり得ません。課題クリアのためには、何のための認証なのか、どのような認証なのか、広く知られていくことが大切です。
フェアトレード製品には、価格が高くなりがちというデメリットがあります。価格が高くなる原因としては、公平な報酬を支払うためや、認証を得るための手数料が必要などの理由が挙げられます。
また、コーヒーやカカオといった農作物は、天候の変化や取引の変動によって、価格が大きく左右されることが。緊急時を乗り越えるためのコストも、フェアトレード価格に含まれるため、製品の価格に影響してくるのです。
しかし、この価格に対するデメリットというのは、消費者側の意識の問題であるという見方もできます。これまで当然だと思っていた「安い価格」は、ビジネスにおける搾取のうえに成り立っているのが現状です。「高い価格」が「あたりまえの価格」として見られるよう、解決策を見つけていく必要があります。
価格が高くなる理由
品質の安定が難しいというのも、フェアトレードが持つデメリットの一つ。フェアトレードを推進しようにも、発展途上国では、技術を習得したり磨いたりするための資金が得られないという課題が。また、衛生管理が十分にできないことが原因で、不衛生な栽培や品質低下を招くというケースが見られます。
また、フェアトレードビジネスが成功した場合にも、課題が残るケースが。生産者や労働者の生活が改善されると、良品質な製品を生み出すためのモチベーションを保ちにくくなり、品質の安定が難しくなるという可能性がある、というものです。
デメリットをなくすには、品質に対する理解の浸透が必要だとされています。フェアトレード団体と生産者の間での、相互の努力が求められるのですね。
フェアトレードには、社会貢献というイメージが強いという問題点があります。本来の目的は、「貿易を公正に」というもの。いずれは、コーヒーやカカオといった一部の製品だけでなく、すべての製品が「あたりまえの価格」で取引されるようになることを目指しています。
そのため、社会貢献というイメージが強いのは、デメリット以外の何ものでもありません。奉仕活動となってしまっては、公正なビジネスや、発展途上国の労働者の自立を阻害する原因にもなってしまいます。フェアトレードビジネスは、社会貢献ではなく、社会全体の当たり前のものとして認識されていく必要があります。
フェアトレードには、単なるプロモーションで終わってしまう可能性もあります。フェアトレードビジネスでは、全ての商品が認証されているとは限りません。維持費の問題から、一部のみの取り扱いとなっている現状も見られます。
少しずつ取り扱いを広げることを意識している企業であれば良いのですが、中には、イメージアップのためのプロモーションとして終わってしまう企業もあり、フェアトレードが広がらない原因の一つとも言われています。正しい目的から逸れてしまっては、貧困問題の解決策とはなりませんよね。
フェアトレードは、多くの利点を持つとともに、デメリットが存在するのが現状です。本当の貧困問題の解決策とするためには、利点もデメリットも理解し、受け入れ、対処を考えていくことが必要になるのですね。
フェアトレードビジネスや、認証を持つ製品を表面的に捉えるのではなく、課題を見据えていくことが大切。街でフェアトレードマークを見つけたら、是非意識を向けみてください。
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