Wellness
ボディポジティブ=自分の身体を愛すること。美の固定概念に囚われない新しい価値観とは
「ボディポジティブ」という考え方について、ご存知ですか?欧米で始まったムーブメントの一つで、体型に対する認識を変えることを目的としています。今回は、ボディポジティブの意味や定義、企業の取り組みなどをご紹介。問題点や批判なども解説しています。
2021.03.09公開
ボディポジティブとは、私たちのありのままの体型を愛するという考え方。「痩せたよね」と言われて喜ぶ人は多いですが、「太ったね」と言われて嬉しいという人は少ないもの。太ったと言われると焦り、何となく蔑まれた気持ちになってしまう…。社会には、「痩せるのは正しく、太るのは悪」という考えが根付いています。
こういった考え方を撤廃しようとするのが、ボディポジティブの考え方なのです。「画一的な美しさ」を追求するのではなく、ありのままの自分の身体を愛する。これが欧米を中心に広がっているボディポジティブ運動です。
ボディポジティブの考え方には、多くの著名人が賛同しています。代表的なのがビリー・アイリッシュ。「着ている服や体型で私を決めつけないで欲しい」と主張し、ライブで下着一枚の姿を披露して体型批判の風潮を一刀両断しました。
Billie Eilish slams body shaming in powerful ‘Not My Responsibility’ short film https://t.co/YQldpikwMk pic.twitter.com/jSVRsvGTxX
— Rolling Stone (@RollingStone) May 27, 2020
また欧米で活躍する歌手・リゾも、ボディポジティブに賛同している著名人の一人。ありのままの姿をSNSなどにアップし、「全ての体型の人が幸せを感じ、自然体で生きられる世の中を」と訴えかけています。
こういった運動が進んだことにより、海外セレブの間ではストイックなダイエットをして痩せれば良い、という風潮がなくなりつつあるとか。健康的でバランスの良い身体を目指す方向にシフトし、あえて完璧ではない姿をSNSにアップする有名人も。女性だけでなく、男性にもボディポジティブの波が広がっています。
ボディポジティブは2012年頃から欧米で広がっていましたが、先駆けとなったのがレディー・ガガの運動だとされています。レディー・ガガは、2013年、「A body Revolution 2013」という運動を開催。自身が経験した拒食症や過食症を告白し、「自分の身体を愛そう」と訴えました。
この運動でレディー・ガガは、自分の身体の変化をSNSにアップ。彼女の運動に共感したファン達も、同じように自分の身体を撮影した写真を一斉に投稿しました。この運動がきっかけとなり、ボディポジティブ運動は欧米から世界に広がっていったのです。
前向きな意見を発信しているボディポジティブですが、問題点や批判を抱えている面もあります。一体ボディポジティブの何が批判されているのか、以下に問題点をまとめました。
ボディポジティブが抱える問題点の一つが、スリム体型への批判です。ボディポジティブが広がるにつれて、スリムな女性を批判する「スキニー・ビッチ」というフレーズが流行。「太っている」という体型を認めるために、細い体型の人を悪者にするような風潮が広がりつつあるのです。
これは、ボディポジティブ本来の考え方を曲解したことで生まれた問題。本来ボディポジティブは、ありのままの姿を受け入れるという考え方。しかし、ボディポジティブを発信する人のほとんどが太っているということから、「ボディポジティブは太ることを推奨するもの」と誤解されているのです。
ボディポジティブの問題点として挙げられるのが、新しい美のスタンダードが生まれているというもの。ボディポジティブの考えが広まったことにより、これまで注目されてこなかった体型の人が活躍する機会が増えました。しかしその一方で、「痩せ体型はダメ」「このような体型であるべき」という考えが生まれているのです。
疎外されていたプラスサイズの男性・女性を受け入れるという流れが、「適度にぽっちゃりな人」を許容するというものに変わっているのです。このまま流れが加速すれば、ボディポジティブの考えが持つ本来の目的と現状がかけ離れてしまうでしょう。
不健康な体型を目指す人が増えてしまうというのも、ボディポジティブの問題点の一つ。プラスサイズの男性・女性がモデルとして起用されることで、その体型に憧れる人が少なからず現れます。その体型になろうと乱れた食生活を行い、生活習慣病を患うのでは、という懸念が集まっているのです。
またプラスサイズモデルが増えることにより、自分の体型に危機感を覚える人が少なくなるという批判も。場合によっては、肥満の言い訳になってしまうという側面を抱えているのです。
📸INSTAGRAM | Iskra via Instagram | @Iskra pic.twitter.com/yHo1bUQcwB
— Iskra Lawrence Daily (@iskradaily) February 19, 2021
ボディポジティブの考えに賛同するモデルとして、イスクラ・ローレンスという女性が挙げられます。彼女はボディポジティブのインフルエンサーとして、熱狂的な支持を集めているモデル。無理なダイエットで摂食障害になった過去を持ち、「自分ではなく世界を変える」ということを目標にしています。
Robyn Lawley Highlife Sweetheart Bustier One Piece all the jewels are SEWN ON Individually via @swimsuitsforall pic.twitter.com/m7pk63BVRn
— robyn Lawley (@Robynlawley) July 2, 2015
ロビン・ローリーも、ボディポジティブを訴えるモデルの一人。ぽっちゃりモデルと言われながら、『Vogue』誌や『ELLE』誌など、数々の有名雑誌の表紙を飾ってきました。
きっかけは自信のInstagramに載せた妊娠線。彼女はそれを、頑張った証だから"カッコいい"と堂々と発信し、多くの女性を勇気づけました。妊娠をきっかけに体型が大きく変化してしまい、自信を失ってしまう女性たちに向けた、心強い言葉ですね。
ボディポジティブに対する取り組みを行なっている企業として、ダヴが挙げられます。この企業では、「ダヴ セルフエスティーム・プロジェクト」という活動が行なわれています。
これは、ダヴの自己肯定感を高め、自分の容姿に自信を持てるようにという想いから始まった運動。無理に痩せなくては、太らなくてはという考えを捨て、自分らしさを愛せる女性を増やす、ということが目的です。
ボディポジティブに取り組んでいる企業として、Targetが挙げられます。欧米で百貨店チェーンを経営する企業で、水着を着用するモデルに様々なスタイルの男女を採用する、という活動を実施。「美しさ」の画一的な基準を撤廃して、「自分は綺麗」という認識を持ってもらおうとする取り組みです。
ピーチジョンという企業でも、ボディポジティブへの取り組みが行われています。「女性に自分の身体を好きになってもらう」というコンセプトの元、お笑い芸人であるバービーと共に、2年以上に渡って商品開発を実施。プラスサイズの女性が抱える、下着に対する悩みを反映しています。
ボディポジティブは、自分のありのままの姿を受け入れるという前向きな考え方。欧米から始まったこの考えは、男性・女性を問わず世界中に広がっています。日本人でもボディポジティブに賛同する人が増えている、という現状も。
しかしその考えが曲解され、批判や問題を生み出す結果にもなっています。ボディポジティブの考えの本質とは何か、きちんと理解した上で、私たちの身体を本当の意味で愛してあげましょう。
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